Scene 9 ペットの条件
### Scene 9 ペットの条件
「ペットにしましょう」
そう決めたレティシアは、さっそく魔獣の前にしゃがみ込んだ。
魔獣はじっと彼女を見ている。
「…………」
レティシアも見つめ返す。
そして。
「ただし、条件があるわ」
「…………」
魔獣の耳がぴくりと動いた。
レティシアは人差し指を立てる。
「家具を壊さない」
「…………」
「食料を勝手に食べない」
「…………」
「夜中に廊下を走らない」
「…………」
魔獣が、すっと目を逸らした。
「……今、目を逸らしたわね?」
「心当たりがあるのでしょうか」
ニーナの言葉に、魔獣はますます視線を逸らす。
レティシアはため息をついた。
「まったく……」
そして、もう一度魔獣の正面にしゃがみ込む。
「守れる?」
魔獣はしばらくレティシアを見つめた。
大きな黒い瞳。
やがて――。
「……クゥ」
小さく鳴いた。
レティシアは満足そうに頷く。
「よし」
「よし、ではありません」
即座にニーナが突っ込んだ。
「ちゃんと契約できたんですか?」
「できたわよ」
「今の鳴き声だけですよ?」
「意思疎通はできたわ」
「本当に?」
「できたことにするのよ」
「それは契約ではなく、お嬢様の一方的な解釈です」
レティシアは気にした様子もなく立ち上がった。
「細かいことはいいの」
「細かくありません」
魔獣はそんな二人のやり取りを眺めていた。
そして、暖炉のそばへ戻っていく。
「……ほら」
レティシアが指を差す。
「もう自分の場所に戻ってるわ」
「最初から自分の家だと思っていたのかもしれませんね」
「なら、なおさら都合がいいわ」
「何がです?」
レティシアは少しだけ笑った。
「私も、ここを自分の家にするつもりだから」
「…………」
ニーナは何も言わなかった。
黒薔薇館には今日から――。
令嬢と侍女と、少し大きすぎるペットが住むことになった。




