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Scene 11 「悪役令嬢」が仕事をする
畑へ向かおうとしたところで、レティシアは一度足を止めた。
「…………」
そして、振り返る。
「……分かったわ」
ニーナが少し意外そうに尋ねる。
「お引き受けになるのですか?」
「困っているんでしょう?」
「はい」
ニーナは微笑んだ。
その笑顔を見て、レティシアは少しだけ視線を逸らした。
「それに……」
「それに?」
「…………」
レティシアは、ほんの少しだけ言い淀む。
そして。
「せっかく私を頼ってくれたんだもの」
小さな声だった。
ニーナは何も言わない。
ただ、嬉しそうに微笑んでいる。
「……何よ」
「いえ」
「その顔、やめて」
「はい」
「絶対、何か思ってるでしょう」
「何も思っておりません」
「嘘ね」
レティシアは少し頬を膨らませた。
けれど。
その表情は、どこか嬉しそうだった。
自分が役に立った。
そして、もう一度頼ってもらえた。
ただ、それだけ。
それだけなのに。
胸の奥が、ほんの少し温かい。
(……悪くないわね)
そんなことを思いながら、レティシアは畑へ向かって歩き出した。
まだ、この場所が好きだとは思わない。
王都より暮らしやすいとも思わない。
ただ――。
「レティシア様、こっちだ!」
「今行くわ!」
呼ばれる声が、少しだけ嬉しかった。




