Scene 7 水が流れる
「……これで最後ね」
レティシアは水路を見渡した。
崩れていた石は組み直され、ひびの入った部分も補修されている。
何度も位置を確認し、これで問題ないと判断した。
「よし」
レティシアが頷く。
「水を流してみて」
住民たちが水路を確認する。
そして――。
ざあっ。
水が流れ込んできた。
最初は土や砂が混じり、少し濁っている。
「…………」
誰もが黙って見つめていた。
やがて。
濁りが少しずつ薄れていく。
水は石造りの水路を、途切れることなく流れていった。
「おお!」
「流れた!」
「直ったぞ!」
住民たちから歓声が上がる。
「これなら畑まで届く!」
「よかった!」
「助かったぞ!」
レティシアは、その様子を腕を組んだまま眺めていた。
そして。
「当然よ」
いつものように、そっけなく答える。
けれど。
その口元は、ほんの少しだけ緩んでいた。
「…………」
ニーナはそれを見逃さなかった。
レティシア自身も気づいていない。
胸の奥に、ほんの少しだけ。
嬉しい、という感情が生まれていた。
自分が見つけた問題を。
自分が指示を出して。
自分の手で直した。
そして――。
誰かの役に立った。
「……ふふ」
小さく笑いそうになって。
レティシアは慌てて表情を戻した。
「当然なんだから」
誰に言うでもなく、もう一度呟いた。




