Scene 12 対比で締める
――その頃、王都では。
「白百合の令嬢!」
「本当にお優しい方ですわ」
「素晴らしい方ですわね」
令嬢レティシアは、たくさんの人々に囲まれていた。
「まあ……ありがとうございます」
彼女は穏やかに微笑む。
誰もが笑顔だった。
誰も彼女を怖がらない。
誰も彼女を悪役とは呼ばない。
「……」
レティシアは嬉しそうに目を細めた。
(これでいいんですわ)
皆に好かれている。
皆と仲良くできている。
それなら。
きっと、幸せなのだ。
――一方。
王都から遠く離れた北の道。
「……さて」
馬車の中で、悪役レティシアは腕を組んでいた。
「辺境って、どんなところなのかしら」
向かいに座るニーナが答える。
「魔物が多く、冬は雪が降り、道路もあまり整備されていないそうです」
「…………」
レティシアは黙った。
数秒。
そして。
「最高じゃない」
「お嬢様」
ニーナは呆れたように言った。
「普通は嫌がるところです」
「そう?」
レティシアは窓の外を見る。
王都とは違う。
見たことのない景色。
知らない土地。
知らない人々。
「王都より面白そうだもの」
「……そうですか」
ニーナは、それ以上何も言わなかった。
馬車は北へ進んでいく。
――王都では、令嬢レティシアが歓迎される。
――辺境では、悪役レティシアが歓迎される。
けれど。
その違いが、本当の意味で明らかになるのは。
もう少し先の話だった。
**第4話・続く。**




