Scene 11 初めての「追放」
馬車は、王都を離れていく。
石畳の道を抜け。
城壁を越え。
やがて、見慣れた街並みが遠ざかっていく。
「……」
悪役レティシアは、窓の外を眺めていた。
追放。
それは、人生で初めて経験するものだった。
王都を出て。
知らない土地へ行く。
そこで、どんな暮らしが待っているのか。
レティシアには、まだ分からない。
ただ一つ。
彼女は、まだ知らなかった。
辺境では。
王都ほど、「誰から好かれるか」が重要ではないことを。
誰に気に入られているか。
どんな噂が流れているか。
どれだけ優雅に振る舞えるか。
そんなことよりも。
「何ができるのか」。
それが、ずっと重要だった。
問題が起きたら。
誰かが決めなければならない。
誰かが動かなければならない。
誰かが。
「それはおかしい」
と、言わなければならない。
そして。
レティシアが王都で「悪い部分」と呼ばれたもの。
決断すること。
すぐに動くこと。
必要なら厳しく言うこと。
問題を見つけたら放置しないこと。
間違っていると思えば、はっきりと反論すること。
それらは。
辺境では、決して欠点ではなかった。
むしろ。
必要とされる力だった。
――本人は、まだ知らない。
やがて。
この地で彼女は、こう呼ばれるようになる。
「頼れるレティシア様」と。
王都で。
「悪い部分」として切り捨てられた少女が。
辺境では。
誰よりも頼りにされることになる。
馬車は北へ進む。
その先にあるのは。
彼女がまだ知らない、新しい居場所だった。




