Scene 9 王都追放
処分は、正式に決まった。
悪役レティシアには、王都への立ち入りを禁じる「名誉追放」が命じられた。
行き先は、北西の辺境。
グランフェル。
王都から遠く離れた、魔物と雪と厳しい自然に囲まれた土地だった。
「……」
侯爵は、何も言わなかった。
ただ、苦しそうな顔で娘を見ている。
その隣には、荷物をまとめたニーナが立っていた。
「レティシア……」
父親が、ようやく口を開く。
その顔を見て。
悪役レティシアは、少しだけ眉を寄せた。
「その顔やめて」
「……」
「私は死ぬわけじゃないんだから」
軽く言ってみせる。
侯爵は、それでも表情を変えなかった。
「辺境でしょう?」
レティシアは肩をすくめる。
「だったら、そこで暮らせばいい」
「……本当に、それでいいのか?」
侯爵の声は、ひどく静かだった。
レティシアは答えなかった。
窓の外を見る。
王都の街並み。
ずっと暮らしてきた場所。
友人も。
思い出も。
そして。
自分を「本物ではない」と判断した人たちも。
もう、ここには戻れない。
「……」
ほんの少しだけ。
胸が痛んだ。
それでも。
レティシアは振り返る。
「……まあいいわ」
いつものように、少しだけ強気に笑った。
「王都に未練なんてないもの」
ニーナが静かに頷く。
侯爵は、何か言いたそうに口を開きかけた。
けれど、結局何も言わなかった。
やがて。
辺境へ向かう馬車の準備が始まった。




