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悪役令嬢レティシア、二人になりました  作者: 南蛇井


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Scene 6 アルベルトの判断

「……アルベルト様」


令嬢レティシアが、静かに彼の名を呼んだ。


アルベルトは、すぐには答えなかった。


視線の先には、二人のレティシア。


同じ顔。


同じ声。


同じ記憶。


どちらも、自分が知っているレティシアだった。


だからこそ。


簡単には決められなかった。


「僕にとっても……難しいんだ」


アルベルトは苦しそうに言った。


「どちらが本当の君なのかなんて、僕には分からない」


悪役レティシアは黙っている。


アルベルトは続けた。


「でも……」


令嬢レティシアを見る。


「今の君と一緒にいると、安心するんだ」


令嬢レティシアが、少し驚いたように目を瞬かせる。


「以前の君は、よく僕に反対した」


「……」


「僕が間違っていると思えば、はっきり言ってくれた」


悪役レティシアの眉が、ほんの少し動いた。


アルベルトは、それに気づかない。


「でも、今の君は穏やかで……優しい」


そして。


「僕は……レティシアは、君のほうだと思う」


令嬢レティシアを見る。


「…………」


悪役レティシアは、何も言わなかった。


アルベルトは少しだけ迷ってから、言葉を続ける。


「彼女は、昔の君が持っていた優しさを、すべて持っている」


その言葉を聞いて。


悪役レティシアは、ゆっくりと目を伏せた。


「……そう」


小さく笑う。


「つまり私は、いらないってことね」


「え?」


アルベルトの顔が強張る。


「ち、違う。そういう意味じゃ――」


「同じことでしょう」


悪役レティシアは静かに言った。


怒鳴らない。


責めない。


ただ、淡々と。


「優しいほうが本物で」


「私は、その中から切り捨てられた部分」


アルベルトが何か言おうとする。


けれど、言葉が出てこない。


悪役レティシアは、そんな彼を見て。


もう一度、笑った。


今度は、少しだけ寂しそうに。


「……分かったわ」


その笑顔は。


いつもの彼女より、ずっと静かだった。


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