↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢レティシア、二人になりました  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
199/208

第9場面「王都には戻らない」

「あなたと一緒にいられる場所を、探したいのです」


その言葉のあと。


二人の間に、静かな時間が流れた。


悪役レティシアは。


しばらく令嬢レティシアを見つめていた。


やがて。


ふっと。


小さく笑う。


「……本当に変わったわね」


「そうでしょうか?」


令嬢レティシアは、少し首を傾げる。


「ええ」


悪役レティシアは腕を組んだ。


「前のあなたなら、もっと必死に『一緒に帰りましょう』って言ってたでしょうね」


「……」


「私が嫌だって言っても」


「……そうかもしれませんわ」


「『どうして?』って何度も聞いて」


「……」


「最後には、皆に相談して、どうすれば私を連れ戻せるか考えてたと思う」


令嬢レティシアは、苦笑した。


「否定できませんわね」


「でしょう?」


悪役レティシアも笑う。


けれど。


その笑みが。


少しだけ消えた。


「でも」


「……?」


悪役レティシアは、まっすぐに令嬢レティシアを見る。


「私は王都には帰らないわ」


「……」


その言葉を聞いて。


令嬢レティシアは。


少しだけ目を伏せた。


けれど。


今度は。


すぐに顔を上げる。


「はい」


「……」


悪役レティシアが、目を瞬く。


令嬢レティシアは。


穏やかに微笑んだ。


「分かりましたわ」


「……」


悪役レティシアは、しばらく固まっていた。


「……随分あっさりね」


「そうでしょうか?」


「そうよ」


悪役レティシアは、少し呆れたように言う。


「昨日まで、あんなに帰ってほしそうにしてたじゃない」


「ええ」


「なのに?」


「はい」


令嬢レティシアは、頷いた。


「あなたが決めたことですもの」


「……」


「私が決めることではありませんわ」


悪役レティシアの表情が。


わずかに変わった。


令嬢レティシアは続ける。


「あなたがここで暮らしたいと思うのなら」


「……」


「それを尊重したいと思います」


「……本当に?」


「はい」


今度は。


迷わなかった。


「私も、自分で決めることの大切さを知りましたから」


悪役レティシアは黙っている。


「なら」


令嬢レティシアは、静かに続けた。


「あなたにも、自分で決める権利がありますわ」


「……」


その言葉に。


悪役レティシアは、少しだけ視線を逸らした。


「……なんか」


「はい?」


「変な感じ」


「何がですの?」


「あなたにそんなこと言われるの」


令嬢レティシアは、少し笑う。


「私もですわ」


二人の間に。


また静かな時間が流れた。


以前なら。


令嬢レティシアは。


「嫌です」と言っていただろう。


「どうしてですの?」と聞き続けただろう。


相手が望む答えにたどり着くまで。


何度も話し合おうとしたかもしれない。


けれど。


今は違う。


自分がどうしたいのかを考える。


そして。


相手にも。


相手自身の答えがあることを認める。


それは。


諦めることではない。


無関心になることでもない。


むしろ。


相手の意思を。


ちゃんと一人の意思として受け止めることだった。


「……では」


令嬢レティシアは、穏やかに言った。


「これから、どうするのかを考えましょう」


「……一緒に?」


「はい」


悪役レティシアは。


ほんの少しだけ笑った。


「それなら、いいわ」


夕暮れの黒薔薇館。


二人のレティシアは。


まだ別々の場所にいる。


けれど。


初めて。


同じ方向を見ていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。