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悪役令嬢レティシア、二人になりました  作者: 南蛇井


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第6場面 「私の半分」

### 第16話 第6場面 「私の半分」


「……」


しばらくの沈黙のあと。


レティシアは、静かに口を開いた。


「あなたは……私の失った半分です」


「……」


悪役レティシアの目が、わずかに細くなる。


そして。


「……勝手に決めないで」


短い言葉だった。


けれど。


そこには、はっきりとした拒絶があった。


レティシアは、その言葉を聞いても。


否定しなかった。


「ええ」


素直に頷く。


「……」


悪役レティシアが少し驚いた顔をする。


「だから」


レティシアは続けた。


「あなた自身のことも、知りたいのです」


「……私自身?」


「はい」


レティシアは、庭へ視線を向けた。


そこには。


工具がある。


魔道具がある。


修理された柵。


手を加えられた庭。


王都にいた頃には、見たことのないものばかりだ。


けれど。


それらは確かに。


目の前にいるレティシアが、この場所で暮らしてきた証だった。


「あなたが、ここで何をしたのか」


悪役レティシアは黙っている。


「誰と出会ったのか」


「……」


「何を守りたいと思っているのか」


そこで。


レティシアは一度、言葉を止めた。


そして。


まっすぐに悪役レティシアを見る。


「そして……何をしたいと思っているのか」


「……」


悪役レティシアの表情が変わった。


ほんのわずかに。


けれど。


確かに。


それまでの警戒が、揺らいだ。


何をしたのか。


誰と出会ったのか。


何を守りたいのか。


何をしたいのか。


そんなことを。


誰かに聞かれたことなど、なかった。


王都から来た者たちは。


きっと自分を見ていると思っていた。


「王都を追われた悪役レティシア」


「不要な部分」


「本来のレティシアから切り離された存在」


そんなふうに。


けれど。


目の前の彼女は違う。


自分がここで何をしたのかを聞こうとしている。


誰と出会ったのかを聞こうとしている。


何を守りたいのかを聞こうとしている。


そして。


何をしたいのか、と。


「……」


悪役レティシアは、思わず視線を逸らした。


庭の隅に置かれた工具を見る。


修理途中の魔道具を見る。


少しだけ歪んだ柵を見る。


どれも。


自分がここで手を動かしてきたものだ。


「……そんなこと」


ぽつり。


「聞いて、どうするのよ」


レティシアは少し考えた。


そして。


「知りたいのです」


「……それだけ?」


「はい」


あまりにも迷いのない返事だった。


悪役レティシアは、思わずレティシアを見る。


「……」


その目に。


ほんの少しだけ。


戸惑いが浮かんでいた。


自分は今まで。


「捨てられた悪役」だった。


そう思っていた。


けれど。


この人は。


自分をそんな名前で呼ばない。


ただ。


自分のことを聞いている。


「……」


悪役レティシアは小さく息を吐いた。


「……変なの」


「またですか?」


「だって」


悪役レティシアは、少しだけ困ったように眉を寄せる。


「普通は、もっと別のことを言うでしょう」


「別のこと?」


「『王都へ戻りなさい』とか」


「……」


「『あなたは私の一部なんだから』とか」


レティシアは少し考える。


「それは……」


そして。


静かに首を振った。


「あなたが決めることですわ」


「……」


また。


その言葉だった。


悪役レティシアは、何も言えなくなる。


自分は。


今まで。


「不要なもの」だと思われていた。


けれど。


もしかすると。


この目の前の自分は。


自分を――。


一人の人間として見ようとしているのかもしれない。


「……」


そのことに気づいて。


悪役レティシアは、ほんの少しだけ。


目を伏せた。


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