↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢レティシア、二人になりました  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
180/202

第2場面 「……何しに来たの?」

しばらく。


二人は何も言わずに見つめ合っていた。


同じ顔。


同じ声。


同じ記憶を持つ。


それなのに。


目の前にいる相手は、自分とはまるで違って見えた。


やがて。


先に視線を逸らしたのは、悪役レティシアだった。


小さく息を吐く。


そして。


「……何しに来たの?」


その声には、歓迎する気配などまるでなかった。


レティシアは、一瞬だけ言葉に詰まった。


「……」


何と答えればいいのだろう。


王都から来た。


わざわざグランフェルまで来た。


その目的は――。


「……迎えに来ましたわ」


はっきりと答えた。


悪役レティシアの眉が動く。


「……」


そして。


「帰りなさい」


即答だった。


あまりにも迷いがない。


後ろにいたニーナが、そっと目を閉じた。


(やっぱり、こうなりますよね……)


クラリスも、苦笑いを浮かべている。


王都から来た一行の間に、なんとも言えない空気が流れた。


けれど。


レティシアは、悪役レティシアから目を逸らさなかった。


「……」


帰りなさい。


その言葉を聞いた瞬間。


胸の奥に、いつもの感覚が浮かび上がった。


――相手がそう望むなら。


――それが一番いいのではないかしら。


――皆様がよろしいのでしたら。


いつもの自分なら。


きっと、そう答えていた。


けれど。


「……」


レティシアは、静かに息を吸った。


ここへ来るまで。


何度も考えた。


人の話を聞くこと。


相手の気持ちを考えること。


そして。


自分で決めること。


全部、同じではない。


だから。


レティシアは。


「嫌です」


言った。


「……」


悪役レティシアの目が、大きく開かれた。


ニーナも。


クラリスも。


後ろにいた騎士たちも。


一瞬、動きを止める。


そして。


誰よりも驚いていたのは。


「……」


レティシア自身だった。


(私……)


今。


何と言ったのだろう。


「嫌です」


もう一度、頭の中でその言葉を思い返す。


自分から。


相手の言葉を。


はっきりと拒んだ。


これまでなら。


嫌われないように。


相手を困らせないように。


場の空気を悪くしないように。


自分の気持ちを飲み込んでいた。


けれど。


今は違う。


「……」


レティシアは、自分でも少し驚きながら。


それでも。


悪役レティシアを見つめ続けた。


悪役レティシアは、しばらく固まっていた。


そして。


「……あんた」


眉をひそめる。


「今……」


「はい」


レティシアは答えた。


「嫌だと申し上げましたわ」


「……」


悪役レティシアの表情が、さらに複雑になる。


まるで。


自分自身に「嫌」と言われたような。


そんな顔だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。