↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢レティシア、二人になりました  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
126/184

第8場面 夜、自分に問いかける

――夜。


レティシアは自室の机に向かっていた。


昼間の政策資料が、机の上に広げられている。


「…………」


もう一度。


最初から読み直してみる。


王都の財政。


地方への負担。


国民への影響。


短期的な利益。


長期的な問題。


一つずつ考えていけば。


それぞれのメリットも、デメリットも分かる。


「…………」


だから。


本来なら。


答えは出せるはずだった。


以前の自分なら。


資料を読み終えたところで、迷わず言っていた。


『私は、こちらが正しいと思います』


たとえ反対されても。


たとえ嫌な顔をされても。


自分がそう判断したのなら。


その理由を説明していた。


「…………」


レティシアは、二つの資料を並べる。


右。


左。


何度見比べても。


決められない。


「……どうして?」


小さく呟く。


もう一度、考える。


こちらには、こういう利点がある。


けれど、こういう問題がある。


こちらなら、その問題は抑えられる。


けれど、別の負担が生じる。


どちらがより良いのか。


それを考えることはできる。


なのに。


最後の一歩だけが。


どうしても踏み出せない。


「…………」


レティシアは、ペンを置いた。


静かな部屋。


時計の音だけが聞こえる。


ふと。


ある考えが浮かんだ。


(……私は)


自分で決めることが。


怖いのだろうか。


「…………」


少し考える。


違う。


そんな気はしなかった。


今さら、意見を言うことそのものが怖いわけではない。


以前ほど。


嫌われることを恐れているわけでもない。


むしろ。


今の自分は。


誰からも好かれている。


「白百合の令嬢」


そう呼ばれて。


優しいと言われて。


皆が笑顔を向けてくれる。


アルベルトも。


クラリスも。


家族も。


みんな。


「…………」


なのに。


どうして。


「……私は」


レティシアは、もう一度資料を見る。


そして。


自分に問いかけた。


(私は、どちらが正しいと思っているの?)


答えは。


出てこない。


(……こちら?)


違う。


(では、こちら?)


それも違う。


どちらも理解できる。


どちらにも理由がある。


だからこそ。


「…………」


レティシアは、眉を寄せた。


(私は、どちらを選びたいの?)


その瞬間。


胸の奥が、静かになった。


何もない。


嫌だ。


という気持ちも。


こっちがいい。


という気持ちも。


浮かんでこない。


ただ。


「皆様がよいと思われる方で」


昼間に口にした言葉だけが。


頭の中に残っていた。


「…………」


レティシアは、そっと目を閉じる。


何かを決めるのが怖いわけではない。


嫌われるのが怖いわけでもない。


それなのに。


自分の意見だけが。


どこを探しても見つからなかった。


「……おかしいわ」


誰に言うでもなく。


そう呟いた。


けれど。


何がおかしいのか。


それすら、まだ分からなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。