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悪役令嬢レティシア、二人になりました  作者: 南蛇井


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第12場面 幸せの違い

――王都。


深夜。


レティシアは、まだ眠れずにいた。


窓の外には、静かな夜の街。


昼間なら人で賑わう大通りも、今はほとんど人影がない。


「…………」


レティシアはベッドの上で、ぼんやりと天井を見つめていた。


眠らなければ。


明日も予定がある。


社交の場も。


人との約束も。


やるべきことは、たくさんある。


けれど。


どうしても眠れない。


――一方。


王都から遠く離れたグランフェル。


黒薔薇館。


「……すぅ……」


悪役レティシアは、すでに眠りについていた。


今日一日、散々働いたせいだ。


ノワールはベッドの横で丸くなっている。


机の上には、明日の仕事のための書類。


明日は鉱山へ行く予定だ。


けれど。


今はもう。


何も考えていない。


ただ。


静かに眠っている。


二人は。


同じ顔をしている。


同じ記憶を持っていた。


同じ人生を歩んできた。


同じ両親に育てられ。


同じ人を愛し。


同じ断罪の日を経験した。


――なのに。


今は。


まるで違う場所にいる。


片方は。


誰からも嫌われないことを望んでいる。


誰かに喜んでもらえるなら。


少しくらい我慢してもいいと思っている。


そして。


片方は。


嫌われることを恐れなくなり始めていた。


嫌なものは嫌だと言う。


間違っていることは、間違っていると言う。


誰かに頼られれば、自分ができることをする。


誰かに「助かった」と言われれば。


それを、素直に嬉しいと思う。


片方は。


「愛されたい」と願っている。


片方は。


「自分を守る」ことを覚え始めている。


どちらが正しいのか。


まだ。


誰にも分からない。


ただ一つ。


確かなことがある。


――嫌われないことと。


――幸せであることは。


本当に。


同じなのだろうか。


「…………」


王都。


レティシアは、ゆっくりと身体を起こした。


胸元に手を当てる。


そこには。


何もないはずなのに。


何かが足りないような。


そんな感覚だけが残っている。


「私は、幸せなはずなのに」


小さな声が。


静かな部屋に落ちる。


「どうしてこんなに――」


レティシアは。


胸元をそっと握った。


そして。


誰にも聞こえない声で。


呟いた。


「……息苦しいのかしら」


――第9話・終。


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