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悪役令嬢レティシア、二人になりました  作者: 南蛇井


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第9場面 アルベルトの優しさ

――アルベルトも。


最近のレティシアの変化に、気づき始めていた。


ある日のこと。


二人は王城の庭園で話をしていた。


「レティシア」


「はい、殿下」


アルベルトが、少し不思議そうに彼女を見る。


「君は最近、僕に反対しなくなったね」


「……そうでしょうか?」


レティシアは首を傾げた。


「ああ」


アルベルトは笑う。


「以前の君なら、すぐに意見を言っていただろう?」


「…………」


レティシアは思い出す。


確かに。


以前なら。


「殿下、それは危険です」


「その判断には問題がありますわ」


「そのまま進めれば、別のところに負担がかかります」


そんな言葉を、何度も口にしていた。


アルベルトの決定に反対することも。


間違っていると思えば、はっきり指摘することもあった。


けれど。


今は――。


「殿下がお決めになったことなら」


レティシアは、柔らかく微笑んだ。


「私は、それでよろしいと思いますわ」


「……そうか」


アルベルトの表情が、嬉しそうに緩んだ。


「やっぱり君は優しいね」


「…………」


レティシアは、一瞬だけ黙った。


そして。


「ありがとうございます」


いつものように。


微笑んだ。


アルベルトも、安心したように笑う。


「君とは、これからも一緒にいたいな」


「……はい」


レティシアは頷く。


穏やかな時間だった。


何も問題はない。


アルベルトは嬉しそうだ。


自分も笑っている。


――なのに。


一瞬だけ。


胸の奥が。


きゅっと痛んだ。


「…………」


レティシアは、そっと胸元に手を添える。


けれど。


すぐに手を離した。


(……どうして?)


分からない。


アルベルトは優しい。


自分も、アルベルトを大切に思っている。


だから。


嬉しいはずなのに。


なぜか。


胸の奥に、小さな痛みが残っていた。


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