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悪役令嬢レティシア、二人になりました  作者: 南蛇井


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Scene 10 辺境伯からの仕事

「その代わり」


ハロルドが言った。


「?」


レティシアが顔を上げる。


「辺境に住むなら、働いてもらう」


「…………」


レティシアの顔が引きつった。


「……何を?」


ハロルドは答える代わりに、机の上の地図を広げた。


大きな地図だった。


グランフェルの領地全体が描かれている。


街道。


水路。


鉱山。


村々。


そして中央に描かれた城塞都市。


「…………」


レティシアは地図を見つめる。


あちこちに印がついていた。


赤い印。


黄色い印。


書き込みだらけの場所。


どう見ても――


問題箇所だった。


「困っている場所が山ほどある」


ハロルドが淡々と言う。


「…………」


レティシアは無言で地図を見る。


一つ。


二つ。


三つ。


数えるのをやめた。


多すぎる。


「お前なら、いくつか解決できるだろう」


「……私、一応侯爵令嬢なのだけど」


「知っている」


「本来なら、もっと優雅な仕事を――」


そこでハロルドが顔を上げた。


「できるのか?」


「…………」


レティシアが止まる。


「侯爵令嬢だから、できないのか?」


「…………」


「それとも――」


ハロルドが少し笑う。


「できないのか?」


「…………」


レティシアは地図を見る。


水路。


道路。


鉱山。


村。


どれも、放っておけば誰かが困る。


そう思った瞬間。


答えは決まっていた。


「……できるわよ」


ハロルドが笑った。


「そうだろうな」


レティシアは少しだけ眉を寄せる。


(……この人、最初から私が断らないと思っていたわね)


どうやら。


「そのままでいい」というのは――


何もしなくていい、という意味ではなかったらしい。


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