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Scene 8 辺境伯は全部知っている
「……私のこと、調べていたの?」
レティシアが尋ねる。
ハロルドは、当然のことのように答えた。
「当然だ」
「何を?」
「水路を直したこと」
「……」
レティシアが黙る。
「畑の相談を受けていること」
「……」
さらに黙る。
「黒薔薇館の魔獣を飼い始めたこと」
「…………」
完全に固まった。
「……そこまで知っているの?」
思わず聞き返す。
ハロルドは平然としている。
「辺境伯だからな」
あまりにも当然のように言われて、レティシアは言葉を失った。
(……辺境伯って、そこまで把握しているものなの?)
水路を直した。
畑の相談を受けた。
そして――
魔獣をペットにした。
最後の一つについては、自分でもどうしてこうなったのか、いまだによく分かっていない。
それすら知られている。
レティシアは隣に立つニーナを見る。
するとニーナが、小さな声で呟いた。
「お嬢様、意外と有名人ですね」
「嬉しくないわ」
即答だった。
ハロルドが、また少し笑った。
「そう言うな」
「笑い事ではないでしょう」
「辺境では、悪い意味で有名になるよりはずっといい」
「…………」
レティシアは複雑な顔をした。
どうやら自分が思っている以上に――
グランフェルでは、もう知られ始めているらしい。




