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新宝島  作者: たかたか
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28/31

第28話:決戦の準備

ジムたちの船は、シルバーの船団よりわずかに先に港へ滑り込んだ。


挿絵(By みてみん)


錨を下ろすと同時に、三人は岸壁に飛び下りた。

「ジム! 久しぶりだね!」港で働いていた住民たちが、久しぶりに帰ってきた少年の姿を見て声を上げた。市場の女や漁師の男たちが次々と集まってくる。

「トムさんの孫が帰ってきたぞ!」「元気そうじゃねえか!」

しかしジムは笑顔を返す余裕もなく、息を切らしながら声を張り上げた。

「みんな、聞いてくれ! 今すぐ戦う準備をしてくれ!シルバーが迫っているんだ! ジョン・シルバーだ!」

住民たちがざわめいた。

「シルバー? あの海賊か?」「本当か、ジム!」


ジムは詳しく説明を始めた。

「おじいちゃんが殺されたんだ! ジョン・シルバーに!宝島でシルバーに宝を奪われ、仲間も何人も死んだ。あいつは僕たちを追いかけて、今まさにこの島に向かっている。船団で来る。ここで迎え撃たないと、街が襲われる!」

最初、住民たちはざわめいただけだった。

「シルバー? あの海賊か?」「本当か、ジム?」「大げさなんじゃねえのか?」半信半疑の空気が広がる。港の男が腕を組んで首を傾げ、市場の女も不安そうに顔を見合わせた。


ヘレンが前に出て、真剣な声で続けた。「本当です! 私の父も海軍の提督です。シルバーは冷酷な男で、すぐにでも攻撃してくるでしょう。嘘なんかじゃありません!」

アダムスも厳しい表情で一歩前に出た。「時間がありません。武器を集め、港と街を守れ。協力してくれ。でないと、この街は焼かれるぞ」

それでも住民たちの表情は晴れなかった。誰もが「本当にそんなことが……」と戸惑っている。


しかし、ジムがさらに声を振り絞った。

「おじいちゃんは……トム・ホーキンズは、この街のみんなに慕われていたはずだ!民宿を切り盛りして、困った人を放っておかなかった人だ!そのおじいちゃんが、シルバーに殺されたんだ!僕の話を疑うなら、この傷を見ろ! この服の血を見ろ!僕は本気だ。みんなを守りたいんだ!」

ジムの目には涙が浮かび、声は震えながらも力強く響いた。ヘレンも必死に訴え、アダムスの険しい表情にも嘘はなかった。


徐々に、住民たちの顔が変わっていく。

「……トムさんが殺されたのか」「あのシルバーが本当に来るってのか」「ジムの目は本気だぞ」

誰かが小さく呟いた。「トムさんは俺たちの恩人だった……。ジムの話と様子からすると、本当らしい」

別の男が拳を握った。

「信じるしかねえな。トムさんの孫がここまで必死なんだ」


空気が一気に変わった。

「分かった! トムさんの仇だ!」「武器を出せ!」「子供と老人は内陸へ避難させろ!」

街は一気に騒然となった。

漁師たちは銛や斧を手に取り、若い男たちは銃を担ぎ、女たちは水や包帯、食料を急いで用意し始めた。港には樽や木材を積み上げてバリケードが急造され、屋根の上には見張りが立った。鐘が鳴らされ、街中に「海賊が来るぞ!」という声が飛び交う。ジムの故郷は、急速に戦場の準備へと変わっていった。



一方、海上ではシルバーが旗艦の甲板で望遠鏡を覗いていた。隻眼で港の様子を捉え、ゆっくりと口元を歪めた。

「……ふん。先に上陸しやがったか。ジャマイカの島で迎え撃つ気だな」

シルバーは望遠鏡をゆっくりと下ろし、隻眼で港を睨みつけた。

部下が傍らで慌てた声を上げる。

「船長、どうしますか? 上陸を強行しますか? 相手は街の連中と合流してるみたいです!」

シルバーは義足をコツコツと鳴らし、低く笑った。

「ああ。ここが最後の戦場だ。トム・ゴールドの因縁を、この島で終わらせる。全船、戦闘配置につけ!上陸部隊を用意しろ。一人残らず潰す!」


船団が一斉に動き始めた。帆が調整され、大砲の準備音が響き、他の船員たちが武器を手に甲板を駆け回っている。

そんな中、クック、ヘンリー、アンの三人だけが甲板の片隅に集まり、小声でひそひそと話していた。


クックが大きな腹を押さえながら青ざめた顔で言った。「おい……本気で上陸して戦うのかよ。俺たちは雑用だぞ? 陸の戦いなんてやったことねえのに……また失敗したら船掃除どころじゃすまねえぞ」

ヘンリーが弾薬箱を抱えながら不安そうに呟いた。「僕も嫌だよ……。相手は街の人まで武装してるんでしょ?前みたいに簡単にはいかないと思うんだけど……。僕、また一番下っ端に戻されたくないなあ」

アンが腕を組んでため息をついた。

「何よこれ。私は褒めてもらえると思ってたのに、こんな大規模な戦いに巻き込まれるなんて聞いてないわ。ヘンリー、あなたのせいよ? ちゃんと仕事してればこんなことにならなかったのに」

「僕のせいじゃないでしょ! クックが先にサボってたからじゃないか」

「俺のせいじゃねえ! お前ら二人がいつも足を引っ張るからだ!」

三人がまたもや小さな口論を始めかけたとき、近くを通りかかった船員が三人を見つけて怒鳴った。

「おい! 何サボってんだ、お前ら!戦闘準備だぞ! 弾薬運んでろ! 武器配れ! ボヤボヤしてると本当に海に放り投げるぞ!」

クックたちが慌てて飛び退いた。

「ひぃっ、す、すみません!」「今やります!」「分かってるわよ!」

三人は他の船員に混じって、狼狽しながらも準備を手伝い始めた。


船団が一斉に動き始めた。帆が調整され、大砲の準備音が響き、海賊たちが武器を手に甲板に集まる。クック、ヘンリー、アンも他の部下に混じって、必死に準備を手伝っていた。


港ではジムが住民たちと共に立ち、海を睨んでいた。シルバーの船団が、黒い影となって着実に近づいてくる。


最期の戦いが、始まろうとしていた——

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