第27話:執拗なシルバー
盗んだスループ船は風を捉え、港を勢いよく離れていった。
後ろからシルバーの部下たちの怒号と銃声が聞こえるが、距離は徐々に開いていく。
「帆を最大限に広げて! このまま逃げる!」ジムが舵を手にして、叫んだ。
騒ぎを聞きつけたシルバーは、アジトから飛び出すように港へ駆け下りた。隻眼で遠ざかる船を捉え、義足を強く地面に叩きつけた。
「ジム・ホーキンズ……!またしても俺の邪魔をしやがって!」
部下が慌てて報告する。
「船長! 宝の一部は奪われ、船も一隻やられました!」
シルバーは低く笑い、ゆっくりと頷いた。
「……いいだろう。ここが最後の戦いだ。トム・ゴールドから続いてきた因縁を、ここで終わらせる。俺が直接、あいつを仕留める!」
シルバーは残った船団を召集し、自ら旗艦に乗り込んだ。
「全員出航だ! 今度こそ絶対に逃がすな!」
大海原に出たジムたちの船は、逃げ切る思いで必死に帆をはらませていた。しかし、シルバーの船団はすぐ後ろまで迫ってくる。
昼は太陽の下で、夜は星明かりの下で、容赦なく追撃が続いた。
シルバーの船団は、まるで影のようにぴったりと後ろにつきまとっていた。
普通ならここまで粘らないシルバーが、今回は異常なほど執着している。
「まだ離されない……! どうしてこんなに執拗なの!?」ヘレンが後方を確認しながら叫んだ。
アダムスが銃を構え、厳しい声で答えた。
「シルバーはいつもなら損得を考えて引く男だ。だが今回は違う。目が据わっている……トム・ゴールドとの因縁を、ここで終わらせるつもりなんだろう」
「おじいちゃんの仇を……あいつは絶対に諦めないんだ。普通のシルバーじゃない。今度ばかりは本気だ」
波が船を激しく揺らし、帆が風をはらんで軋む。
昼間は強い日差しが甲板を照りつけ、夜は冷たい潮風が体を冷やした。それでもシルバーの船団は距離を詰め続け、時折銃声が後方から響いた。
「帆をもっと広げろ! 少しでも離すんだ!」ジムが叫ぶ。
ヘレンがロープを引きながら答えた。
「分かってる! でも相手の船の方が大きいし、人数も多いわ……!こんなにしつこく追ってくるなんて、本当に異常よ!」
アダムスが双眼鏡で後方を覗き、低く唸った。
「やはり近づいてきている。シルバー自身が旗艦の先頭に立っているのが見える……隻眼がこちらを射抜くように見ているぞ」
ジムは前方を睨んだ。「あいつは……僕を、いや、おじいちゃんを許さないんだ。ここで終わらせるつもりで追ってきている」
夜が更けても追撃は止まなかった。星明かりの下、シルバーの船団の灯りが不気味に揺れている。
やがて、水平線の向こうに懐かしい陸地の影が浮かび上がった。
「……あれは」
ジムの目が大きく見開かれた。「僕の故郷だ……! ジャマイカの港町だ!」
船が近づくにつれ、木造の家々や港の様子がはっきりと見えてくる。後ろを振り返ると、シルバーの船団が黒い影のように迫ってきていた。
複数の帆が風を受け、波を蹴って一直線にこちらへ向かっている。
ジムたちの船は、故郷の港へ向かって最後の加速を始めた。
島の陸地が目前に迫る。
上陸する一歩手前——
決戦の地が、すぐそこにあった——




