第26話:トッポの最期
ジムが慎重に扉の南京錠を外し、重い扉をゆっくりと押し開いた。
そこには目を奪われる光景——
部屋一面が黄金に輝いていた。
壁際まで積み上げられた金貨の山、宝石の詰まった箱、銀の延べ棒、真珠の首飾り……。松明の灯りを受けて、すべてがまばゆい光を放っている。シルバーが宝島から持ち帰った財宝のすべてが、ここにあった。
「……ここだ」ジムが息をのんだ。
しかし、その喜びも一瞬だった。
部屋の奥から、聞き覚えのある声がした。
「おや? お客さんかい?」
振り返ると、そこに立っていたのはクック、ヘンリー、アンの三人だった。
クックが腹を揺らしながら笑っている。
「ははっ! なんだ、ジムの小僧じゃねえか。生きてやがったのかよ。洞窟で爆発に巻き込まれて、骨になってると思ってたぜ」
ヘンリー「僕らの船掃除が終わる前に現れるなんて……タイミング悪すぎるよ。」
アン「シルバー様に報告して、ご褒美もらっちゃおうかしら?『侵入者を捕まえました』って言えば、 立場が上がるかもよ」
ジムが低く吐き捨てた。「お前ら……まだここにいたのか。宝を守ってるつもりか?」
クックが銃を取り出し、ゆっくりと構えた。
「守ってるも何も、ここは俺たちのアジトだ。お前らこそなんでいるんだ!」
ヘレンが前に出て、怒りを込めて叫んだ。
「捕まるものですか!あなたたちはシルバーの手先で、私たちを裏切った仲間を見て笑ってるだけじゃない!」
ヘンリーが慌てて手を振った。「待って待って、僕は別に積極的に協力してるわけじゃ……」
「うるさい!」
クックがヘンリーを睨みつけた。「お前はいつもそうだ。言い訳ばかりして!」
アンがクックの肩を叩いた。
「いいから早く決めなさいよ、クック。グズグズしてたら他の連中に持っていかれるわよ」
クックが苛立ちを募らせ、銃口をジムに向けた。
「うるせえ! 全員黙れ!俺が副船長になるんだ、お前らなんか邪魔なんだよ!」
「副船長? 冗談じゃない!」ジムが一歩踏み出した。「お前みたいな奴に、そんな資格はない!」
クックの顔が真っ赤になった。「なんだと、小僧……!いい加減にしろ!」
言い争いがエスカレートし、互いに一歩も引かない。クックがついに我慢の限界を超え、引き金に指をかけた。
「もういい! 黙れ!」
——パンッ!
銃声が部屋に響き渡った。弾は壁に当たり、金銀が激しく散乱する。
「銃声だ! 誰かいるぞ!」廊下の向こうから、複数の足音が急速に近づいてくる。シルバーの部下たちが、銃声を聞いて駆けつけてきたのだ。
「撃ち合え!」トッポが叫ぶと同時に、銃撃戦が始まった。
狭い廊下と部屋の中で、銃声と怒号が飛び交う。ジムたちは宝箱を盾にしながら応戦した。
しかし、敵の数は圧倒的だった。
「うぐっ……!」トッポの体が大きくのけぞった。胸に弾を受け、ゆっくりと膝をつく。
「トッポさん——!」
ジムが駆け寄ろうとしたが、トッポは血を吐きながら手を振った。
「……行け。どうやら……俺はここまでのようだ。宝は……お前たちに託す……」
「そんな……!」
トッポは最後の力を振り絞り、敵に向かって銃を撃ち続けた。そして、静かに倒れ込んだ。
多勢に無勢。これ以上戦っても勝ち目はない。
「逃げるぞ!」アダムスが叫んだ。
ジムは悔しさで唇を噛みしめ、ヘレンの手を引いた。三人は弾を避けながら、廊下を一直線に走り出した。
後ろから追撃の銃声が響く。
「捕まえろ! 逃がすな!」
だが、彼らは止まらなかった。迷路のようなアジトを抜け、森を横切り、港へと疾走する。
港には、シルバーの船が数隻並んで停泊していた。船員たちはまだ騒ぎに気づいていない様子だ。
「あの船だ!」
ジムが一番近くのスループ船に飛び乗った。ヘレンとアダムスもすぐに後に続く。
ロープを切り、帆を上げる準備を急ぐ。
「出航するぞ……!」ジムはハンドルを握りしめつつ叫んだ。
船がゆっくりと港を離れ始めた。後ろでは、シルバーの部下たちの怒号がまだ響いている——




