第24話:嵐への遭遇
トッポの隠していたスループ船に乗り込み、一行は宝島を後にした。
帆を上げ、風を捉えて東へ進む。シルバーの船はすでに水平線の向こうに消え、姿は見えなくなっていたが、シルバーの隠れ家を示す地図を頼りに、方角ははっきりと分かっていた。
「このまま進めば、明日には到着できるはずだ」トッポが舵を握りながら言った。
「シルバーに追いつけるでしょうか……」
ヘレンが隣で頷いた。「追いつけなくても、何とか隠れ家に入ることができれば……」
しかし、その穏やかな航海は長く続かなかった。
空の様子が急に変わり始めた。最初は薄い雲がゆっくりと広がっていただけだったが、みるみるうちに黒く重くなり、風が急に強くなっていく。トッポの表情が険しくなり、舵を強く握りしめた。
「雲行きが怪しい……!ただの海渡りなら問題ないが、嵐が来るとなると話は別だ!帆を少し下ろすぞ!」
ジムが不安そうに空を見上げた。
「トッポさん、大丈夫ですか……?」
「大丈夫じゃねえ! 全員、しっかり掴まれ! 波が来るぞ!」
たちまち空は暗く覆われ、激しい雨が叩きつけ始めた。
左右から巨大な波がまるで壁のように押し寄せ、船を激しく揺らす。水が甲板に溢れ、帆がバタバタと音を立てて引き裂かれそうになる。
「うわあっ! 波が! こんなに高いなんて……!」ヘレンが悲鳴を上げ、手すりに必死にしがみついた。
「ヘレン、離すな! 俺が支える!」ジムが彼女の腕を掴み、自分の体を固定しようとした。
「マストが危ない! このままじゃ折れるぞ!」アダムスが大声で叫んだ。
次の瞬間、さらに大きな波が真横から襲いかかった。船が大きく傾き、甲板がほぼ垂直になる。水が勢いよく流れ込み、誰もが足元をすくわれた。
「船が……沈む! みんな逃げろ!」トッポが舵を手放し、必死に叫んだ。
船体が軋む音とともに木が裂け、マストが大きな音を立てて倒れた。帆はズタズタに引き裂かれ、甲板の一部が丸ごと剥がれ落ちる。ついに船は木端微塵に壊れ、全員が冷たい海へと投げ出された。
「ジム——!」ヘレンの声が波間に消える。
「ヘレン! ここにいろ! 離すな!」ジムが必死に泳ぎ、近くに流れてきた大きな木屑にしがみついた。ヘレンも同じく、アダムスも、トッポも、それぞれが漂流物に掴まり、激しい波に揉まれながら嵐が収まるまで何とか耐えた。
「まだだ……まだ耐えるんだ……!」トッポが波に飲まれそうになりながらも叫んだ。
「みんな、生きていろ……! 絶対に!」ジムも歯を食いしばり、ヘレンの手を離さなかった。
波に揉まれ、雨に打たれ、どれだけの時間が過ぎたのか分からない。ただ、生き延びることだけを考えて、木屑にしがみついていた。
やがて——風が弱まり、雨が止み、黒い雲が徐々に晴れていった。
嵐は去った。
全員、傷つきながらも無事だった。ジムはヘレンの手を握り、安堵のため息をついた。「……みんな、生きてる……」
トッポが波間から顔を上げ、遠くを指差した。「あそこを見ろ」
晴れた海の向こうに、小さな島の影が浮かんでいた。緑の木々に覆われ、岩礁が周囲を囲む無人島。地図と照らし合わせると、間違いなかった。
「あれが……シルバーの隠れ家の島だ」
一行は残った木屑を寄せ集め、必死に泳ぎ、島へと近づいていった。
波打ち際にたどり着くと、砂浜に這い上がり、しばらくその場に倒れ込んだ。息を整え、体を起こしたジムは、島の奥を見つめた。木々の間に、人工的な建物の影がかすかに見える。
「……上陸した。シルバーのアジトは、ここだ、この島全体がアジトなんだ」
「ここからが、本当の戦いね」
トッポが湿った服を絞りながら言った。
「油断するな。シルバーはすでにここにいるはずだ。宝を抱え、油断している今こそ、チャンスだ」
一行は静かに立ち上がり、森の中へと足を踏み入れた——




