第19話:ケローネの裏切り
一行は固唾を飲んで地面を見つめていた。
ケローネがシャベルを地面に突き立てようとしたその瞬間——
パンッ!
洞窟内に乾いた銃声が響き渡った。松明の炎が激しく揺れる。
「動くな、諸君」
低い、野太い声が背後から響いた。ジムが振り返ると、そこに立っていたのは——
ジョン・シルバーだった。義足をコツコツと鳴らしながら、ゆっくりと近づいてくる。隻眼が炎に照らされ、冷たい笑みを浮かべていた。
「シルバー……! やはり後ろからつけてきたのか!」ジムが歯を食いしばって叫んだ。
シルバーは大笑いした。
「はははっ! 当然だろう、小僧。お前たちが動き出した瞬間から、ずっと後ろをつけていたのさ。
ケローネのおかげで道案内も楽だったぜ?」
ジムは素早く周囲を見回しながら必死に考えた。
(ここは狭い……岩陰に隠れれば、シルバーの一味を一人ずつ狙えるかもしれない。
ケローネさんとアダムス提督、ヘレン、そして船員達の力を合わせれば……まだ逆転の目はあるはずだ!)
ここがシルバーとの最終決戦だ!
「シルバー! お前は絶対に宝なんか渡さない!」
ジムが叫びながら動き出そうとした瞬間、
「悪いな、ジム」
冷たい銃口が後頭部に強く押しつけられた。
ケローネの低い声だった。
「ケローネ……さん……? 何を……」
ジムが凍りついたように振り返ると、ケローネは無表情で銃を構えていた。
同時に、残りの船員たちも一斉に銃を向け、ジムたち三人だけを囲んだ。
「ケローネ! お前……裏切り者だったのか!?」アダムスが怒りに震える声で叫んだ。
ケローネはゆっくりと笑った。
「裏切り者? 違うな。最初からシルバーの一味だったのさ。トム・ゴールドの昔の仲間を装って、お前たちをここまで連れてきた。お前たちの複製地図も、全部シルバーに渡してあったんだよ」
ジムの頭の中に、航海中に船底で聞いたあの断片的な会話が蘇った。(「ケローネの言うにはこうだ」「そんな酷いことがねえ」「船長の言うことだから従うしかあるまい」……)
「あの時の話……あれは……!」
ジムが悔しさに顔を歪めた。
シルバーが義足を鳴らしながら近づき、満足げに頷いた。
「よくやった、ケローネ。お前は最後まで役に立ったぜ。ジム、お前はなかなか賢い小僧だったが……所詮はガキだ。トム・ゴールドの孫が、こんな簡単に罠にかかるとはな」
ヘレンが必死に叫んだ。
「ジム! やだ離して! ケローネ、あなた最低よ! ジムが信じてたのに!」
ケローネは冷たく笑うだけだった。
ジムは唇を噛みしめ、悔しさで体を震わせた。「ケローネさん……おじいちゃんの仇を討つって、一緒に戦うって……全部、嘘だったんですね……」
シルバーが大声で笑った。
「はははっ! 宝は全部俺のものだ!さあ、掘る準備をしろ!トム・ゴールドの財宝を、俺がいただくぜ!」
ジムたちは完全に包囲され、抵抗できない状態で捕らえられた。ケローネの銃口は今もジムの背中に突きつけられたままだった。
洞窟の奥、潮が引いた岩棚の中央——ついに、宝を掘る瞬間が迫っていた——




