第14話:束の間の休息
その後、二人は無事に拠点へと戻った——
ケローネやアダムスたちは心配そうに待っており、ジムとヘレンが持ち帰った火薬、ピストル、そして二枚の地図を見せると、皆の目が大きく見開かれた。
特にシルバーの机から持ち出した宝島の詳細地図は重要だった。
その夜、テントの中でランプの灯りを囲み、ジム、ケローネ、アダムス、ヘレンの四人で地図を広げて計算を始めた。シルバーが書き加えた線と座標、複製地図と照らし合わせ、何度も角度と距離を測る。
「……ここか」ケローネが低く唸った。「スパイグラスの丘の北東斜面。表向きの『X』印は囮だ。本当の隠し場所は、さらに奥の洞窟の中。洞窟の入り口は潮の満ち引きで隠される仕組みになっている。」
「不気味なことに……シルバーはまだ動く様子がないな」
見張りを交代で出していた船員の報告でも、シルバー一味は浜辺の野営地で静かにしているという。奇襲を警戒しているのか、それとも何か別の策を練っているのかは分からない。結局、その夜は「しばらく様子を見る」ことで全員一致した。
ジムはヘレンの横顔を見て、心の中で思った。(この何も起こらない時間は、ヘレンにとってもいい気晴らしになるかもしれない……あの惨劇の後だ。少しでも心を休められたらいい)
翌日から、拠点では静かな日々が流れた。
朝は皆で建物の強化に取りかかった。木を切り、壁を補強し、簡単な柵を作り、川沿いに防御用の落とし穴を掘る。ジムとヘレンは一緒にロープを編み、テントの固定を固めた。昼間は食事の準備も分担した。ヘレンは意外と料理が得意で、川魚を丁寧に捌き、野草を加えてスープを作った。
夕方になると、全員で焚き火を囲んで夕食を取った。焼いた魚と硬いパン、干し果物という質素な食事だったが、笑い声が絶えなかった。ケローネが昔の海の武勇伝を大げさに語り、アダムスが海軍時代の失敗談を披露すると、皆が大笑いした。ヘレンも少しずつ笑顔を見せるようになり、ジムの隣に自然と座るようになった。
夜、焚き火の後片付けをしている時、ヘレンがジムのシャツの袖に気づいた。「ジム、その服、ほつれてるわ。脱いでちょうだい、縫ってあげる」
ジムが照れながら上着を脱ぐと、ヘレンは針と糸を手に、火の近くで丁寧に縫い始めた。橙色の炎が彼女の横顔を照らし、長い睫毛が影を落とす。ジムはそんな彼女をじっと見つめ、胸が温かくなるのを感じていた。
二日目の夜。ケローネは皆を集め、重い口を開いた。
「シルバーはまだ動かない。だが、いつまでも待っているわけにはいかん。地図の計算も終わった。明日、朝一番で出発する。本当の宝の在処――潮の満ち引きで隠される洞窟を目指す。準備はいいな?」
ジムは頷き、ヘレンと目を合わせた。
ヘレンも決意のこもった表情で頷き返す。アダムスは剣の柄に手を置き、静かに息を吐いた。
長い様子見の時間は終わり、ついに宝島の本格的な探索が始まろうとしていた——




