第13話:クック&ヘンリー&アン
「誰だ!」
鋭い声とともに、三人の人影が甲板の向こうから現れた。
中央に立つ太った男が、左右に一人の男と一人の女を従えていた。
ジムは見つかったことに開き直り、胸を張って言い返した。
「俺はジム! そっちこそ何者だ!」
太った男が鼻を鳴らして答えた。
「なんだお前は。俺はクック。この船の舟番を任されているのだ!」
その左側にいる細身の若い男が、ため息をつきながら言った。
「僕はヘンリー……お前らのせいで怒られるのが決まっちゃったじゃないか。もう今日の晩飯は抜きだよ、きっと……」
右側の派手な赤毛の女が、腰に手を当てて笑った。
「私はアンよ! ヘンリー、そんなこと言ってる場合?こんな奴らを捕まえて、むしろシルバー様に褒めてもらいましょうよ!」
クックが目を輝かせ、腹をゆすって笑い出した。
「そうだな! お前らを倒してご褒美をもらって、一気に副船長の座に……ふふ、ぐふふふ! 俺の時代が来るぜ!」
ヘンリーが肩を落として呟いた。
「と言っても、雑用の身じゃこんなガキども捕まえても大して上がらないって……いつも通り、俺が後始末させられるんだろうなあ」
アンがヘンリーの頭を軽く叩いた。
「そうよ! むしろ敵に侵入されたことがバレたら、まず叱られるのが先に決まってるわ!あなたのせいよヘンリー! 見張りサボってたでしょ!」
「俺じゃないよ! クックが昼寝してたからだろ!」
「うるさい、お前ら二人とも黙れ! 俺が一番偉いんだからな!」
三人が甲板の上でわちゃわちゃと揉め始めた。
ジムとヘレンは思わず顔を見合わせた。シルバー一味とは思えない、間の抜けた掛け合いに拍子抜けしてしまう。
「よし、お前らを捕まえるぞ!」クックが意気込んで刀を振り上げ、ジムに向かって突進してきた。しかし、勢い余って刀が船の木の柱に深く食い込み、びくとも抜けなくなった。
「ぬ、抜けねえ……!」
クックが慌てて刀を引っ張っている間に、ヘンリーがピストルを取り出した。しかし狙いがひどく下手で、ジムの遥か後方の海に向かって発砲した。
「当たれー! ……あれ?」
アンは意気揚々と刀を持ったが、予想より重かったらしく、刀を上げるだけで顔を真っ赤にし、ふらふらとよろめいた。
「重っ……! 久々に抜いたから!」
ヘレンは呆れたようにため息をつき、ジムの腕を引いた。
「あなた達と遊んでる暇はないわ。ジム、行きましょ」
「待てっ!」
三人が一斉に襲いかかってきた瞬間、ヘレンが突然大きく両手を広げて叫んだ。
「わっ!!!」
「うわあああ!?」
三人は驚きのあまり後ろに飛び退き、互いにぶつかって派手に転倒した。クックは甲板に大の字になり、ヘンリーとアンはその上に重なって気絶した。
ジムは呆然としながら呟いた。
「……何だったんだ、こいつら」
ヘレンは小さく笑って答えた。
「分かんないけど……でも、お土産がたくさん手に入ったわね」
二人は素早くボートに乗り込み、手早く縄を解いた。
ヘレンが櫂を握り、ジムが火薬の小樽と地図の包みをしっかり抱える。ボートは静かに波を切り、シルバーの船から離れていった。
沖合いに漕ぎ出すと、島の緑が遠ざかり、風が心地よく吹いた。ジムは後ろを振り返り、笑いを堪えながら言った。
「シルバーの船番があんな連中だったなんて……少しだけ気が楽になったよ」
ヘレンも頷き、微笑んだ。
「ええ。でも油断は禁物よ。さあ、早く拠点に戻りましょう。みんなに新しい地図を見せないと」
二人が漕ぐボートは、陽光を浴びながら島の浜辺へと戻っていった。
手に入れた火薬、ピストル、そして二枚の重要な地図を抱えて——




