第12話:シルバーの船へ偵察
その夜、ジムとヘレンは岩場から拠点に戻った。
アダムスは特に何も言わず、ただ静かに娘の様子を気にかけていた。ケローネたちは話し合いを続けていたが、ジムはヘレンと一緒に少し離れたテントの隅で座っていた。
翌朝、ヘレンは何かを思い付いたように目を輝かせ、ジムの耳元で小声で囁いた。
「ジム、ちょっと聞いて。シルバーたちが今、上陸して島をうろついているなら……シルバーの船はかなり手薄になっているはずよ。見張りも最低限しか残っていないかもしれない。もしかしたら、宝のありかに繋がる手がかりが船の中にあるかも……」
ヘレンは続けた。「シルバーより先に宝を見つけることができれば……シルバーの活動を阻止思うの。私はそうしたい」
ジムは少し迷ったが、ヘレンの真剣な眼差しを見て頷いた。「わかった。一緒に行こう。でも、絶対に無茶はしないで」
二人は夜の暗さを避けるため、翌日の昼間に行動を起こすことにした。
夜は見えづらく、夜襲を警戒して見張りが厳重になる。日がしっかり登っている時間なら、シルバー一味の警戒も少し緩むはずだ。
翌日の昼過ぎ、陽光が木々の隙間から柔らかく差し込む頃、ジムとヘレンはこっそり拠点を抜け出した。
二人はまず、密林を慎重に進み、木の根や低木を避けながら静かに浜辺へと向かった。
潮風が徐々に強くなり、木々のざわめきに混じって波の音が聞こえてくる。やがて木々がまばらになり、白い砂浜が姿を現した。
ジムは周囲を素早く見回し、ヘレンと視線を交わして頷き合った。
浜辺を少し離れた岩陰に隠してあった小さな手漕ぎボートまで、砂を踏みしめながら素早く移動した。
二人はボートを砂から引きずり下ろし、浅瀬へ押し進めた。冷たい海水が足首まで浸かり、波がボートを軽く揺らす。
ジムが先に乗り込み、オールを握り、ヘレンも素早く後ろに乗り込んだ。
「よし、行くよ」ジムが低く声をかけ、二人は同時にオールを水に差し入れ、力を合わせて漕ぎ始めた。
リズミカルにオールを引き、ボートはゆっくりと沖へと進んでいく。
シルバーの船が停泊している少し沖合を目指し、波に逆らいながらも着実に距離を縮めていった。
案の定、甲板には人影がほとんど見えず、見張りもいない。
「今よ、ジム」
二人はボートを船の横に寄せ、縄梯子を伝って静かにシルバーの船に忍び込んだ。
心臓の鼓動が耳の奥で激しく鳴り、息を殺すたびに喉が乾く。
一歩間違えればすぐに発見され、銃弾を浴びるかもしれない――そんな恐怖が背筋を冷たく這い上がる。
船内は薄暗く、潮の臭いに混じって濃厚な火薬の匂いが鼻を刺した。火薬の小樽が積まれた通路を進むだけで、いつ爆発するかと想像してしまい、指先が震えた。
キャビンに入ると、机の上に火薬の小樽と、整備されたピストルが二丁置かれていた。
ジムは急いで火薬を一つとピストルを一本、ヘレンにもピストルを一本渡した。
物騒な鉄と火薬の重みが、手にずっしりと感じられる。
そして、机の中央に広げられた紙を見つけた。それは宝島の地図だった。
ジムが持っている複製地図をさらに引き伸ばし、詳細に書き込んだもの。
定規とペンが横に置かれ、線が何本も引かれている。
正確な「X」の位置まではまだ特定できていないようだったが、あと一歩のところまで絞り込んでいる様子がはっきり分かった。
さらに机の引き出しを探っていると、宝島の地図とは別の、もう一枚の古びた地図が出てきた。
これは宝島とは明らかに違う島の地形を描いたもので、洞窟や隠し通路のような印がいくつかある。
何の地図かは分からないが、何か重要な場所を示している可能性が高い。
「これも持っていきましょう」
ジムは二枚の地図を丁寧に折りたたみ、火薬の小樽とピストル二丁と共に布に包んで背負った。
あらかた探索を終え、二人は再び甲板へ上がった。
手漕ぎボートに戻るため、船の横に繋がれた縄を取ろうとしたその瞬間――
「誰だ!」
甲板の向こう側から、荒々しい男の声が響いた——




