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新宝島  作者: たかたか
11/12

第11話:決意

三人は森を抜け、川沿いの谷間にあるジムたちの拠点にたどり着いた。

小屋の建設が進められている最中だったが、ケローネと船員たちは突然現れたジムと二人の見知らぬ人物に驚きながらも、すぐに事情を察した。

「無事でよかった……!」ケローネがジムの肩を強く叩き、生き残ったアダムス提督とヘレンを見て深く頷いた。「二人とも、よくぞ生き延びた。ここは俺たちの陣地だ。とりあえず安心しろ」


船員たちも温かく二人を迎え入れた。「ようこそ」「海軍さんも仲間だ」「飯を食って一息つけ」そんな声が飛び交い、拠点は少しだけ明るい空気に包まれた。仲間が二人増えたことで、士気もわずかに上がったように見えた。


しかし、アダムスとヘレンは朝から何も食べていなかった。ヘレンは空腹を我慢していたが、胃が小さく鳴る音を隠せなかった。ジムはすぐに気づき、「まずは腹ごしらえだ。今から昼食の準備をするよ」

船員たちが火を起こし、干し肉と硬いパン、川で獲れた魚を焼いて簡単な昼食を作った。ヘレンとアダムスは熱いスープを飲みながら、久しぶりに口にする温かい食事に少しだけ表情を緩めた。


昼食が終わると、全員で円になって座り、話し合いが始まった。「この島をどう攻略するか」「シルバーをどうかわすか」「地図のX印の場所へどうやって先回りするか」ケローネが地図を広げ、皆が真剣に意見を出し合う。アダムスも海軍の経験から、シルバーの戦術について鋭い指摘をした。


しかし、話し合いが一段落した頃、ジムはふと気づいた。ヘレンの姿がない。

「ヘレン……?」

ジムはこっそり輪から抜け出し、拠点の周囲を探し始めた。

川沿いの道を少し上った、海が見下ろせる小さな岩場。そこにヘレンが一人で座っていた。膝を抱え、遠くの水平線をじっと見つめ、風に髪をなびかせている。さっきの強がりとは裏腹に、肩が小さく震えていた。

ジムは足音を立てないように後ろからゆっくり近づき、優しく声をかけた。

「ヘレン……ここにいたんだ」

ヘレンはびくりと肩を震わせたが、振り向かなかった。

ジムは少し間を置いて、穏やかな声で言葉を紡いだ。

「さっきは強がってたけど……やっぱり辛いよな。お父さんの部下の人たちが、みんな目の前で殺されていくなんて……僕も、おじいちゃんをシルバーに殺されたんだ。民宿で、たった一人の家族だったのに……あの時、僕も同じように悔しくて、悲しくて、胸が張り裂けそうだったよ。だから、君の気持ち、すごく分かる」


ヘレンの肩が小さく震え始めた。今まで必死に堪えていた感情が、ジムの優しい言葉で一気に決壊した。

「……悔しいの……本当に悔しい……!」ヘレンの声が震え、涙が溢れ出した。「父さんの兵士さんたちが、次々と撃たれて……私はただ見ていることしかできなくて……もっと強ければ、もっと早く気づけていたら……みんなを守れたかもしれないのに……!情けなくて、惨めで……自分自身が許せない……!」

彼女は膝を抱え、声を殺して泣きじゃくった。男の格好をしたまま、必死に強がっていた少女の心が、初めて素直に露わになった。悔しさと悲しみと、無力感が混じり合った嗚咽が、風に溶けていく。


ジムはそっとヘレンの肩に手を置き、優しく自分の胸に引き寄せた。ヘレンは一瞬体を固くしたが、すぐに力を抜き、ジムの胸に顔を埋めた。ジムは彼女の背中をゆっくりと撫でながら、温かい声で囁いた。

「泣いていいよ、ヘレン。一人で全部背負わなくていい。僕がここにいるよ。君は十分に頑張った。生き残ったこと、それ自体がすごいことなんだ。これから一緒に戦おう。シルバーに負けないように……おじいちゃんの仇も、君の仲間たちの仇も、少しずつ、取り返していこう」

ヘレンはジムのシャツを強く握り、涙で濡れた声を絞り出した。

「……ジム……ありがとう……本当に、ありがとう……」

二人はそのまま、岩場に寄り添い、海を眺めていた。潮風が二人の髪を優しく揺らし、遠くで波の音が静かに響く。甘く切ない時間が流れていた。



その少し後ろの木陰では、アダムス提督がこっそり二人を尾行してきていた。娘の姿を探しに来た彼は、岩場で寄り添うジムとヘレンを見て、驚きと苦笑いを浮かべた。しかし、すぐに表情を和らげ、静かに踵を返した。


アダムスは二人だけにしてやることに決め、足音を忍ばせて拠点へと戻っていった——

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