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新宝島  作者: たかたか
10/13

第10話:生き延びた二人、新たなる仲間

その日の午後、遠くから響く銃声と叫び声が止んだ後も、宝島の森は重苦しい沈黙に包まれていた。



ジムはケローネの制止を振り切り、単身で密林を抜け、浜辺近くの岩陰へと忍び寄っていた。

「ジム、戻れ! 無茶だ!」

ケローネの低い声が背中に突き刺さったが、ジムは振り返らなかった。

「助けたい……シルバーの好きにはさせない」

胸の内で繰り返し、複製地図を握りしめて前へ進む。


岩の隙間から覗くと、惨劇の現場が目に入った。シルバー一味の野営地近くの開けた砂地に、海軍の兵士たちが縄で縛られ、列を作って跪いていた。

シルバーは義足をコツコツと鳴らしながら、部下に命じていた。

「一人ずつだ。ゆっくり味わえ。海軍の提督様から始めるか? それとも坊やからか?」


兵士たちは次々と引きずり出され、シルバーの部下が銃を突きつけ、引き金を引く。

乾いた銃声が響くたび、体が崩れ落ち、砂が赤く染まる。

ジムは歯を食いしばった。助けたい。

でも、どうしようもない。

百人を超える兵士は、もう半数以上が血の海に沈んでいた。


だが、ジムから見て手前の数人――まだ処刑の順番が来ていない者たちは、助けられそうだ。

後ろからこっそり近づき、縄を切る。ジムは息を殺し、茂みを這うように進んだ。

最初の男の縄をナイフで切り、耳元で囁く。

「動かないで……今、逃げます」男はアダムス提督だった。

二番目の縄を切った瞬間――若い兵士の格好をしたヘレン――

シルバーの部下の一人が気づいた。


「誰だ! そこに小僧が!」


逆上したシルバーが、素早く銃を構えた。

「ジム・ホーキンズ……! お前か!」


銃声が炸裂した。ジムはとっさに身を翻し、弾丸を紙一重でかわした。

砂が跳ね、耳元で風を切る音がした。

「今だ! 走れ!」


ジムはアダムスとヘレンの腕を掴み、二人を連れて密林へ飛び込んだ。

背後で怒号と銃声が追いかけてくるが、木々が盾となった。

三人は必死に走った。息が上がり、枝が顔を切り裂く。

だが、無茶をした代償はあまりにも大きかった。

後ろから聞こえてくる最後の銃声と、シルバーの嘲笑。

残りの海軍兵士は全員、処刑された。

生き残ったのは、アダムス提督とヘレンの二人だけだった。


ようやく追手が遠ざかり、捕まっていた場所を見下ろせる岩山の斜面まで辿り着いた時、

ジムは足を止めて振り返った。

浜辺の砂地は赤く染まり、倒れた兵士たちの姿が小さく見えた。

ヘレンはその惨状を目にして、突然声を上げて泣き崩れた。

「父さん……みんな……!」


その声は、明らかに少女のものだった。ジムは驚いてヘレンの顔をまじまじと見た。

男の粗末なシャツとズボンに身を包み、髪を後ろで無造作に束ねている姿は、まさに少年のように見えた。

しかし、涙に濡れた大きな瞳、長いまつ毛、そして震える声の柔らかさ――どう見ても女の子だ。

「え……女の子……? 君、女の子だったのか……!」


ヘレンは悔しさと怒りで顔を真っ赤にし、拳を強く握りしめた。

「そうよ……! 私はヘレン・アダムス! 父さんの娘よ!みんな……仲間たちが、目の前で殺されていくなんて……

私がもっと強ければ、父さんを守れたかもしれないのに……くそっ……シルバーの野郎、絶対に許さない……!」


彼女の声は悔しさに震え、涙が頰を伝って落ちた。

ジムは胸が締め付けられる思いで、そっとヘレンの肩に手を置いた。


「ヘレン……ごめん。君の気持ち、すごく分かるよ。おじいちゃんも、シルバーに殺されたんだ。

僕も同じように悔しくて、怖くて……でも、今は生き残った者たちが頑張らないと。

君が泣いても、兵士さんたちは戻ってこない。でも、君がここにいるってことは、まだ戦えるってことだよ。

一緒に……シルバーに立ち向かおう。僕も、君の力になるから」


ジムは精一杯の優しい声でそう言い、ヘレンの背中を軽く叩いた。

ヘレンは少しの間、嗚咽を堪えながらジムの言葉を聞いていたが、やがて涙を拭い、歯を食いしばって頷いた。

「……ありがとう、ジム。弱音を吐いてごめん……私はもう泣かない。

絶対に、父さんと一緒に生き延びて、あの男に報いを受けさせる」


アダムスは娘の肩を抱き、沈痛な面持ちで黙っていた。


ジムは二人に向き直り、静かに言った。

「よければ……ウチの拠点に来なよ。

ここじゃ危ない。一緒に……シルバーに立ち向かおう」


アダムスは一瞬迷ったが、娘を守るため、そして生き残った責任から、ゆっくりと頷いた。

「恩に着る……少年」


三人は再び歩き始めた。森の奥、川沿いの谷間を目指して。

ジムの拠点までは、まだ少し距離があった。

木々の間を抜け、川のせせらぎが近づく中、ヘレンは時折嗚咽を漏らしながら、ジムの背中を追いかけた。

アダムスは無言で銃を構え、背後を警戒する。


宝島の緑は、三人を静かに包み込んでいた。



だが、シルバーの恐怖は、すでに島全体に広がり始めていた——

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