第6話 Six Feet Under④
「えっ、もう終わったのかい?」
「あぁ。一番時間のかかる木材の準備自体はここの人達も協力してくれたし、修理するための時間はたっぷりあったからな」
「いやだとしてもだろ……凄いなライアンくんは」
そう言って目を丸くするアルフレードを横目に、ライアンは斧を振るう。パコンッと小気味のいい音がして薪が割れた。
これもリハビリついでにと始めた薪割りだったが、だいぶ板に着いてきた気がすると、割れた薪を拾い集めながら考える。
「別にそんな凄くはねぇって。ただのリハビリと暇潰しだよ」
「君はそうやって謙遜するけど、ライアンくんのおかげでここのみんなも生活がしやすくなったって喜んでるんだ。もう少し素直にその賛辞を受け入れてもいいんじゃないか?」
「んなのいいんだよ別に。ただ何もしてねぇでのんびりしてるのが性に合ってねぇだけだったんだし。あっ、次のやつくれるか?」
「全く……君は頑固だなあ。フィーちゃんもイニちゃんも苦労するわけだ」
ほらと手渡された丸太を切り株の上に置き、また斧を振るう。再びパコンッと小気味のいい音が辺りに響いた。
「あん? どう言う意味だよ」
「そのままの意味さ。それで? 家の修理が終わったら次はどうするんだい?」
「どうするって……」
そこで言い淀んでしまう。なんと答えたものかと考えあぐねながらアルフレードが置いてくれた丸太へ斧を振り下ろすも、斧は真っ直ぐに振り下ろされることなく、木が割れることはなかった。
「だー! クソッ!」
「アハハハッ! ライアンくんは動揺するとすぐに手元がブレるな」
「うっせぇ」
余計なことを言われなかったらちゃんと割れていたと思うも、動揺したことは事実だ。それが悔しくも腹立たしい。
「それで? 動揺したってことはまだここに残ってくれるのかい?」
「……それも悪くねぇかもな」
「おや? 意外だな。ライアンくんのことだからすぐにでも出て行くと言うと思ったんだけど」
「何とも思ってねぇならそう言ってたさ。でも、ここは余所者の俺らを温かく受け入れてくれた。納得はしてねえがお尋ね者の俺らをな。……優しい人ばっかだって思うよ。それに、みんなどれだけ苦しくても笑ってるだろ。それが居心地いいんだ」
「へぇ……じゃあ」
「でもな」
アルフレードの言葉を遮りながら、再び斧を振るう。一際気持ちのいい音が辺りに響き、綺麗に割れた薪が足元に転がった。うん、もう迷いはないな。
「俺にはやることがあるからな。本当はずっとここに居てぇけど、それだと俺の目標は達成できねぇ」
「……真っ直ぐなライアンくんらしいな」
「どーも。まっ、目標が達成できたらここに帰って来てもいいかなとは思ってるよ。本当にそれぐらいここはいい場所だ」
ライアンがニッと笑うと、アルフレードもつられて微笑む。その表情は似ていなかったけれど、確かにバッカスによく似た温もりがあった。本当に二人の血が繋がってないのが不思議なくらいだ。
「とりあえず今日のところはこれくらいかね」
「そうだね。これだけあれば少なくとも二ヶ月は保つよ」
「うげっ、まだ二ヶ月かよ」
「ハハハッ! 充分だよ。みんな楽ができたって喜んでたよ。と言うかライアンくんは求めすぎじゃないか?」
「んなっ! 別に求めてるとかじゃねぇから!」
「分かった分かった。じゃあそう言うことにしといてあげるよ」
「だから何で上からなんだよ! お前本当に俺と同い年か!?」
「アハハハッ! ライアンくんは本当に面白いなぁ。そんなの同い年だからこそだよ。まっ、僕は一児の父親だからってのもあるけどね」
「うぐっ……」
そう言われてしまえば何も言い返せない。実際少しだけ子育ての手伝いをフィーとしたが、二人揃って半日過ごしただけで満身創痍になってしまったぐらいだ。本当に、世の親と言うのは凄まじいことをしているもんだと感心してしまう。
「……今日は勘弁しといてやる」
「ライアンくんは本当に負けず嫌いだなぁ」
「うっせぇ! アルフレードはいつも一言多いんだよ!」
「ん? 褒め言葉?」
「んなわけねぇからな!?」




