第6話 Six Feet Under②
「……終わったな」
髭面の男は黒焦げになったターゲットの死体をサングラス越しに見下ろしながらポツリと呟く。それからポケットの中から丁寧に折り畳まれた紙束を取り出す。その中から目的の一枚抜き出し、頬から垂れた血でバツを描いた。
今回の依頼は流石に骨が折れたと一人息を吐く。
「よぉ、お疲れさん」
そんな声がして、聞こえて来た方へ顔を向ける。そこには今し方殺したばかりの男と同じ制服に身を包んだ初老の男が一人、煙草を咥えて立っていた。
「遅いぞオリヴァー・プレンダーガスト」
「遅いってお前なあ……俺が潜入してたおかげでスムーズに終わったんだから感謝して欲しいもんなんだがねぇ。後ポルジョ。そのフルネームで呼ぶの止めろと何回も言っただろうが」
ポルジョと呼ばれた髭面の男は返事代わりに小さく鼻を鳴らす。オリヴァーはそんな彼の様子に、頭痛がするとでも言うように顔を押さえた。
「あぁそうだったポルジョ。新しい武器、どうだった?」
「悪くはない。出力も問題なく出る分任務も早く終わる。ただ、耐久性には難ありと言ったところか」
ポルジョは言いながら手の平に着けていた機械を取り外す。高電圧に耐えきれずショートしてしまっている手の平大の機械は、白い煙を悲鳴のように上げていた。もう少し耐久力が上がれば問題なく兵器として活用できるだろう。警察機構から犯罪者の討伐用にと支給されたそれを、ポルジョはオリヴァーに放り投げる。
「おいおい投げんじゃねぇよ。こいつは試作品とは言え国から支給されてるもんなんだぞ? そんな雑に扱うんじゃねぇって前から言ってんだろうが」
「どうせそれは試作品だろう。多少壊れたところで問題はない」
「問題はないってお前なあ……まあいい、性能については俺から上に報告しておく」
「よろしく頼む」
ポルジョは心底どうでもいいとでも言うようにそう返すと、手に持っていた手配書をパラパラと捲った。その中から、先日渡されたばかりの二枚をへと視線を落とす。
まだ若い子ども達のものだ。その内の一枚を抜き取り、ポルジョはじっと眺める。
気のせい、だろうか。他人の空似ということもあるだろう。だが――
「……まさかな」
「ん? 何か言ったかポルジョ」
黒焦げになった死体を嫌そうに眺めていたオリヴァーが訊ねる。しかし、ポルジョは「いや」と言って首を緩く振った。
「何、犯罪者は増える一方だと思っただけだ」
「カハハッ減ってくれりゃ俺達も仕事しなくて済むんだがなぁ」
どこか疲れたように笑うオリヴァーに、ポルジョは何も返すことはない。
もう一度だけ手配書へ視線を落とし、ポルジョは再び丁寧に折りたたんでいく。どうやら仕事はまだまだ終わりそうにない。
「行くぞ」
ポツリと呟きポルジョはオリヴァーの返事も待たずに部屋を出る。
ポルジョにはやらなければならないことがある。それを成し遂げる日まで、足を止める訳にはいかない。
足を止めるのは、己が死ぬ時だ。
ポルジョはニット帽を深く被り直し、ただ静かに、自らの使命を心の中で繰り返した。




