第5話 Life is Beautiful⑤
イニを折れてない方の肩に乗せ、ライアンが暖簾を掻き分けて外へ出ると、そこにはあのハーネス・シティと同じ場所だとは信じられない程に荒れ果てた光景が広がっていた。
視界に映る家々はどれもボロボロで、雨風をやっと防げるかどうかと言った有り様だった。そんな中でも子ども達が元気に走り回っている光景を、ライアンはじっと眺め続ける。
「ライ? どうかした?」
「んーにゃ。何でもねぇよ」
「そっ?」
ライアンがこくりと頷くと、イニもそれで満足したのかついっと視線を正面へ向けた。つられてそちらへ視線を向けると、遠くでニコニコとした笑みを浮かべてここの住人らしき人々と談笑するフィーの姿が見えた。
「あの子、ライが寝てる間にすっかり人気者になっちゃったみたい」
「ハハッ相変わらずスゲェなアイツ。少なくとも俺にはできねぇ」
「そうかしら? ライも同じ時間いれば、きっとあっという間に馴染んじゃうと思うけどね」
「どーだろうな」
「そーよ。きっとね」
ライアンがまだ納得のいっていない表情を浮かべるも、イニは「早く行きましょ」と急かすのみでそれ以上語ってくれることはない。
「あっ、やっと来た! 遅いよ二人ともー」
手をぶんぶんと振っているフィーの元へ向かうと、そこには年季の入った大きな机があって、促されるままに椅子へと腰掛ける。
「悪い、遅くなった」
「本当だよぉ。ささっ、そんなことより早く座って座って」
先程のことなどなかったかのように笑う彼女に、内心救われる。フィーは鼻歌を奏でながらライアンの前に温かそうな湯気の立つスープと白パンを手際よく並べてくれる。
「これは?」
「ふふーん。あたしが作ったんだよ! 凄いでしょー」
そう言って胸を張る彼女に、ライアンは素直に驚いてしまう。
「へぇすげぇな……ん? フィーって料理できたんだっけか?」
思い出されるのは【スリースペード】での光景で、食材を破壊したり調理器具を破壊したりを繰り返したせいで、呆れたジェニーによってホールに回されたはずだ。こんな短期間で料理を習得できるなんて、成長著しいなと偉そうにも感心してしまう。
「あーえっとそのっ……本当はわたしが作ったって言うか、エイミーがほとんど作ってくれたんだけどね……」
そう言って気まずそうに頬を掻く彼女に、ライアンは「エイミー?」と首を傾げる。
「うん。あそこにいる女の子。あたしと同い年なんだって」
フィーの視線の先には、先程彼女が抱いていた赤子をあやしている少女がいて、ライアン達の視線に気が付いたのか、どこか照れ臭そうな笑みを浮かべて三人の元へやって来た。
「ごめんなさい、ご挨拶がまだでしたね。わたしはエイミー。よろしくね」
そう言って差し出された手を、ライアンは動く方の手で握り返す。
「それは俺もだよ。俺はライアン・カーライル。フィーが世話になった」
「なっ! キミの世話したのあたしなんだけど!?」
フィーが大きな声で訴えたせいで、ウトウトとしていた赤子がフィーの声に驚いてわんわんと声を上げて泣き出してしまう。
「あぁ! エンナちゃんごめんねー!」
ワタワタとしてしまうフィーに、エイミーが「大丈夫よー」と朗らかに笑う。その様子を見ていると、二人が本当に同い年か疑わしくなるばかりなのだが。




