はい、どうぞ
今日も二話投稿します。
「申し訳ありません、アイリーン様とのお話を、…外で伺っておりました」
実はさっきハンナにクリスティナを連れてくるよう、こっそり指示していた。
フェリクスが話に混ざった時点で、ここはもう腹をくくって三人ですべて話し合った方がいいと思ったからね。
クリスティナは震える声だったが、真っ直ぐに宰相を見つめていた。
その瞳には、今まで抱いていた恐怖だけではなく、微かな希望が混じっている。
「私は……お父様に嫌われているのだと思っていました。魔力を持たず、家門の恥だから、あんな恐ろしい場所へ捨てられるのだと。私を守るためだったなんて一度も考えたことはありませんでしたわ」
「クリスティナ……」
閣下は椅子から立ち上がるが、そのまま項垂れ、固まったまま。
まあ、心の準備出来てないまま連れてきちゃったからね。それはすまん。
すまん、なのだが…ホント不器用な人だな。
とりあえず見守る姿勢でいたらようやく絞りだしたような声で呟いた。
「……すまない。私は、お前を愛する方法を間違えてしまった」
「………」
クリスティナも、なんて答えたらよいのか黙ったままだ。
うーん、ぎこちない。
二人のやり取りに思わずため息が出ちゃう。
まどろっこしいのは嫌いなのでココはひとつ教育的指導を施してあげよう。
私は扇子をパチンと鳴らし、二人の間に割って入った。
「閣下、「すまない」はもう聞き飽きましたわ。今クリスティナ様が欲しいのは懺悔ではなく父親としての言葉とぬくもりです」
私はぐいっと閣下の背中を押し、クリスティナ様の目の前まで立たせた。
「閣下、これからわたくしが話す言葉を復唱して下さい。『クリスティナ、お前は私の自慢の娘だ。生きていてくれてありがとう。愛している』 はい、どうぞ」
「アイリーン嬢、何を……っ」
「いいから早く復唱!」
私のあまりに強引な教育に、宰相はうろたえているが逃がさないよ。
フェリクス様が「ふっ」と吹き出し、
アベルは無表情ながら穏やかに私を見つめていた。
「……クリスティナ。私は……。お前が、誰よりも大切だ。……生きていてくれて、本当に、ありがとう。……愛している」
閣下は顔を真っ赤にしながらも、意を決したようにクリスティナ様の肩に手を置くとそう口にした。
不器用ながらも繋いだその言葉の温かな響きに、クリスティナの瞳から大粒の涙が溢れ出した。
「…ぅ……ううっ……うぁーん!おとうさまぁ!」
彼女は張り詰めていた糸が切れたのか、子供のように声を上げて泣きながら父親の胸に飛び込んだ。
驚きに目を見開いていた閣下も、やがて壊れ物を扱うような手つきでしっかりと娘を抱きしめた。
フェリクスは父の本音と妹が見せる慟哭を黙って見つめていた。その瞳の奥には、妹を孤独にさせてしまった自分自身への後悔が滲んでいる。
(そっか、フェリクスも妹を孤独にさせてしまったと思っているのね)
思わずフェリクスの手を取り二人の近くまでたたせると、その手をそのままクリスティナの手に重ねて、さらに、宰相のもう片方の手を、空いているフェリクス様の手に重ねさせる。
私の行動に、三人は一瞬驚いたように顔を見合わせていたが、やがて、くすっと笑い合った。
そして、堰を切ったように互いを抱きしめあい
、涙を流した。
バラバラだった家族の心が、今、一つになった瞬間だ。
(やばい、原作にもない、ちょー勘当シーンだわ。もらい泣きしそう)
私たちは、この奇跡のような親子の時間を邪魔しないよう、音を立てずに応接室を後にした。
このシーンお気に入りなのです。
自分もアイリーンと同じくもらい泣きしながら書きました。
ようやく公開出来た~。
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