破滅への道筋の推測
すみません、ちょっと忙しくてしばらく1話投稿になりますm(_ _)m
「お兄様、なんだか嬉しそうなお顔ですわね。珍しいですわ。それにほんのりお顔が赤いような気が…」
クリスティナ様が、タルトを咀嚼する手を止めて、ニマニマとした笑みを浮かべた。
「ふふっ。こうしてお二人で並んでいると、お兄様とアイリーン様は華があって本当にお似合いですわね」
待てい。クリスティナ!
その顔ってばさっきまで読んでいた小説のおせっかいな親友役そっくりなんですけど。
「……そうかな」
その言葉に、あろうことかフェリクス様が照れながら喜んでいる。なぜだ!
「ええ、とっても!」
クリスティナは前のめりで肯定してくるし、なんだか、よくない方向に話が進んでいるわね。
よしここは、一旦軌道修正を試みよう。
「クリスティナ様、わたくしとフェリクス様がお似合いなんて、あり得ませんわ。彼にはもっと、清楚で可愛らしい方のほうが似合っておりますわよ。それに……フェリクス様は、わたくしを毒婦だの害悪だのと殿下とお話しされていましたよね。ですからお側にいたら不快に感じるだけでしょうし。ねぇフェリクス様!」
私が事実をちょっとした恨み節を込めて突きつけると、今度はフェリクス様が真っ青になった。
その言葉に、今までの私たちの中を知らなかったのか、「…お兄様、本当ですの?本当なら、許せませんわね」とクリスティナが般若のような顔で兄を睨みつけてる。
あれ?穏やかなティータイムの雲行きが怪しくなってきた。
そんな私の心の焦りに応えるように庭園の木々の影から一人の男が音もなく姿を現した。
アベルだ。
救世主キター!
アベルの視線は私の隣にいるフェリクスをほんの一瞬だけ、射殺さんばかりの鋭さで捉えていたような気がする。
気のせい、かな。
「アベル!何か報告かしら? ええ、そうよね、大事な報告ね!ここではなんですもの、向こうへ行きましょう!お二人とも申し訳ないけど席をはずさせていただくわ。ごゆっくりなさってね!」
椅子を蹴らんばかりの勢いで私は立ち上がり、アベルに向かって自然に手を伸ばす。
体調が戻っても甘やかされすぎたせいでつい無意識にアベル椅子を催促してしまっていた。
アベルはいつも通りの無表情ながら、まるで壊れ物を扱うかのような手つきで私を抱きかかえると、二人に向かって事務的な一礼をし、そのまま私をさらっていくように私室へと連れ帰ってくれた。
その時のフェリクスの苦々しい顔に気づきもせずに…
***
ハンナに改めてお茶を淹れ直してもらい、私はアベルに向き直り報告を促す。
「何かわかったの?」
「はい。例の黒装束の遺留品について、少々不穏な手がかりが見つかりました」
「不穏な手がかり!?」
その言葉に私室は一気に緊張の渦に飲み込まれる。
アベルは私の前に膝をつき、懐から布に包まれた“何か”を取り出した。
「現場の近くに落ちていた、黒装束の一人が所持していたと思われる護符です。お嬢様、この刻印に見覚えは?」
差し出された銀の板に刻まれていたのは、複雑な幾何学模様。
それを見た瞬間、私の背中に冷たい汗が流れた。
(……嘘、これ、原作で魔王の復活を画策していたカルト教団の紋章じゃない!)
「……アベル、これって……」
「はい。この怪しい護符を見る限り、あの男たちはただの拉致集団ではないと思われます。腕も立ち、組織的に魔術を使ってましたし、それにあの魔獣と魔石…。おそらく、あの魔獣は魔石やこの護符と密接な関係があるかと存じます」
「密接…?」
思わずごくっと喉を鳴らす。アベルの瞳が冷徹な光を帯びた。
「はい、あの魔獣たちの魔力はなにかおかしいものがありました。この護符にも同じ魔力を感じます」
「魔石も、そうなの?」
「…今は魔石の魔力は消えてしまっております。けれど拾った直後の残っていた残滓から微かに感じておりました」
「そう。通常の魔力とは違うもの。…考えられるのって……」
「闇、です」
「…やみ…」
「はい、もしこの推測が正しければ国家を揺るがす規模のなにかが動き始めているかと」
アベルの淡々とした、けれど威圧感のある声に心が重くなる。
アベルの持ってきた報告があまりにも重すぎる。
(やっぱり、魔王様復活コースじゃん…)
私を破滅へと引きずり戻そうとする原作の強制力に頭が痛くなった
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