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筆頭婚約者候補を降りさせていただきます

落雷のショックは身体に思ったより影響があったようで、

昏睡から目覚めるまで10日

ベットから起き上がれるようになるまでさらに5日

立って過ごせるようになるまで10日かかった


しっかし、こんなに学園を休んでいるのに

ヒーロー王太子も幼馴染ヒロインちゃんもお見舞いどころか連絡一つよこさないな。

ヒーロー君はわかるけどヒロインちゃんは幼馴染なのに気にならんのかね。

優しい性格じゃなかったっけ?

こられても面倒だからいいけどさ。


ちなみに今の私は自慢の魔力量がなくなって、魔術がほとんど使えない状態のただの我儘令嬢である。


医者曰く事故の後遺症らしい。何時元に戻るかはわかんないんだって。

しかし、この状態はチャンスでもあるのだ。

なぜなら、プライドの高いアイリーンがこんなにも弱っているので、気持ちもなえて


「婚約者候補からおりますよ」って言いやすいのだ!


あまりにも元気溌剌なのに婚約者候補からおりたいって言ったら、お前何か企んでる?と周りは疑心暗鬼になって、最悪監視対象にもなっちゃうかもしれない。


けれどこの弱った体であれば間違いなく納得してもらえるはずだし、なんならようやっと立場わかったかって安心されるに違いない。


だからこのチャンスは逃すものかと勢いづく。


ちなみに目覚めてからも体力がないせいで、すぐには普通の生活には戻れずようやく起き上がっての生活ができるようになった。

その間、食事は部屋でとっていたので父親にずっと会うことができていない。



落雷事故前も、執務が忙しい父親と、立派な王妃になるために予習復習と生徒会の仕事が忙しいアイリーンは食事時しか一緒の時間はとれてなかった。


おかげで記憶を辿る限り、父親とはほとんど没交渉だったようだ。

実のところ、お父様は子供にめっちゃ愛情はあるし、妻のことは溺愛している。

でもそれは漫画からの情報で、アイリーンが闇落ちして魔王になってから描かれている後出しの情報だ。

家族間のすれ違いもアイリーンの魔王様への道のりの一旦を担っていたけど…。


幸い今の私は前世の記憶で、逢えなくても父親の愛情を知っているのでストーリー通りにならない自信がある。

だから魔王様にはならないと思うけど、幸せな人生を送りたいので先手を打たなきゃ。


あ、一応母親や兄妹はお見舞いと称して部屋にきてくれていたので前世思い出してからの顔合わせは済んでいるよ。


余談だが、母親、兄妹共に美人ぞろいだった。やはり血は争えないなと思った。



「ねぇ、お父様に会いたいのだけど」


私付き侍女のハンナに声をかけてみる。

少し年上のこの侍女は私の頼れる存在だ。

前世思い出す前もハンナはよく私に尽くしてくれて、私もこの侍女には心を許していた。



「ちょうど今の時間なら執務室におられるかと。ただ公爵様もお忙しい身なのでお会いできるかどうか…。お嬢様がお会いしたい旨をマルクス様にお伝えいたします」


マルクスはお父様付きの補佐官件執事だ。


「ええ、お願いね。お話ししたいことがあるので、どうしても時間を作ってほしいと伝えて頂戴」

「畏まりました」


ハンナが部屋を出るとベットの上で伸びをする


「さーて、うまくやらなきゃね」



ハンナが戻ってきて、マルクスから了承の意をいただいたと黒い笑みで伝えてきた。

ハンナ、怖いよ。なにしたの?


軽めのデイドレスに着替えさせてもらってお父様の執務室に向かう。

髪はめんどくさいのでおろしたままだ。


部屋のドアを開けると私付きの護衛のアベルが立っている

曲がりなりにも継承権もち公爵令嬢、当然専属護衛もいるよね。

本来なら私Tueeeなので屋敷内での護衛はいらないって言ってたんだけど、今は弱っているので部屋の前で常に待機してもらっている。


しかし、よく見るとこの男性も整った顔してるわ。


シルバーの髪に湖のような澄んだ青の瞳、クールガイでかなりのイケメンマッチョだ。

身長なんか2m近くありそう。


うーん、やはり世の中、ヒーロー王太子じゃなくてもいい男はいっぱいいるのだから

余計なしがらみは早く外そう。


「お父様のところに行くわ。ついてきて」

「御意」


ハンナとアベルを引き連れて執務室まで行くとすでにマルクスがドアの前で私を待っていた。

私を確認すると執務室のドアを鳴らす


「ああ、入れ」

「お父様、お忙しいところ失礼いたします」


完璧なカーテシーを披露して部屋に入る。

目の前の父はさすが美人家族の長、渋みのましたロマンスグレーの美丈夫だ。

何でしょう、この世界はイケメンパラダイスなのかな?

そんなことを心の中で考えているが決して顔には出さないよ。


「構わん、体調はどうだ」

「一進一退ですわ。今日は調子のいい方ですが少しめまいがしますね」

「そうか、なら立っているもつらいだろう。座りなさい」

「ありがとうございます。では遠慮なく」


マルクスに目線で指示すると心得たようにマルクスが私をソファに誘導してきたので

言葉通りためらいなくソファに座る

だってすでに疲れたのよ。

座ったついでに出されたお茶を一口味わう。

うん、美味しい。


「で、急に来るなんて何用かな」

「単刀直入に申しますわね。王太子殿下の筆頭婚約者候補を降りさせていただきます」

「は、え?」


そんなびっくりする?

お父様イケメンがだらしないお顔になってますよ

ハンナもマルクスもアベルも固まってるのはなぜ?


「どういう心境の変化だ、お前が自らそんなことを言うなんて」

「体調がよくなさすぎるのですよ。いつまでたっても回復のめどが立たないのです。

こんな体では王妃の仕事なんて無理かと思ったのです。いまだに庭園を30分も歩けないですし、なんなら頭痛もするし、ペンも持てないし、食欲もないし…

とにかくいろいろ回復しないので自分の体を大切にすることを優先しようって思ったんです!」


怪しまれないようにと思うほど焦ってしまって

いろいろなんでもかんでも無理やりこじつけてみた。


「確かに自分の身体を大切にすることは、大事だが…」


あ、皆さん、そんなになったのは自分のせいだよねって顔ですね。

いやいや、あれは事故っす、事故。


「ええ、王太子妃業、ひいては王妃業は優雅に見えても実は体力勝負ですもの。ですが、このように学園にも通えない状態では、わたくしの我儘だけで続けられるものではありませんし、とにかく辞退したいのです」

「本気か?」

「もちろんですわ」

「だが、お前はあれほどまでに殿下のために頑張っていたじゃないか」

「そのことですが、これほど長く学園を休んでいるのに殿下はお見舞いにいらっしゃるどころか気遣いの手紙一つくださらない。わたくし、それほどまでに疎まれていたのだと気づいてしまって、もう頑張る気力が持てないのです。身体のこと以外にもそのことで目が覚めたのです」

「確かに、私の方にも殿下からは気遣いの言葉はいただいてないな…」


お父様も、ハンナもアベルもマルクスも、かわいそうな子を見る目でこっちを見る。

やめて、同情はいらないよ。


椅子のひじ掛けをトントンと指ではじきながらお父様は何かを考えていたが、ようやく言葉を発した。


「そうか、では王家に報告するがいいんだな」

「ええ、お願いします」

「ほんとーにいいんだな」

「ええ、ほんとーにいいです」


3回くらいこのやり取りをしたのち、私の本気度が伝わったのかようやく納得してもらえた。

なんなら、最後はお父様は、ほくほくとした笑顔だった。

ヒロインちゃん爆誕で王太子妃レースが苛酷になったから、早くアイリーンを辞退させるよう宰相あたりに娘の説得頼まれていたのかもね。


「それから、今後のことについてですが……このままでは学園へ通うことも叶いません。ひとまず今年度の残りは、休学の形を取らせてくださいませ。来年度が始まるまでの間、療養を兼ねて別荘へ移りますわ。幸い、単位はすべて取得済みですし、これまでは皆勤で通っておりました。あと三ヶ月ほどお休みしたとしても、進級に必要な出席日数は十分に足りるはずです」


これもずっと考えていたこと。

さすがにこのペースでは、体調が完全に戻るのか自分自身でも心配になってきちゃった。


こういうときは温泉とかに湯治に行くっていうじゃない。


調べたところ、この世界にも温泉は存在するらしいし、幸いなことに、わが公爵家の別荘の一つがちょうど温泉の湧き出る場所にあるという。


なので!ゆっくり回復に努めようって思ったわけ。

我ながらナイスアイデアだわ。



お読みいただきありがとうございます。

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