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原作の私といままでの状況

アイリーン・フォン・ベルモット公爵令嬢といえば、

漫画「光と闇の輪舞(通称ヒカヤミ)」に出てくるヒロインの敵役だ。

ヒーローである王太子殿下の筆頭婚約者候補で、王家に連なる公爵家の令嬢であり、頭脳明晰、スタイル抜群。おまけに王国一ともいわれる魔力量の持ち主。水と風の二属性に親和性があり、結合魔術まで使いこなす、スペックぴかいちのチート級令嬢だ。


ヒーローは言わずと知れたこの国の王太子サマ。

エルヴィン・フォン・ライシエル

輝く金髪に碧眼、頭も剣の腕も超一流。身長も高くてスタイル良し。公明正大で性格も良し。

アイリーンに負けず劣らずの火と風の二属性もちのスパダリさんだ。


ヒロインはエリーゼ・フォン・ハイデン。

ピンクブロンドで、小柄なフツーもフツーの伯爵家令嬢。

残念ながら魔力量はそこそこで水魔術を少し使えるかな、くらい。

ベルモット家の寄り子でアイリーンの幼馴染でもある。



この世界の人々は、身分を問わず誰もが魔力を宿している。

属性は火・水・風・土・光の五つ。魔力量が多いほど強力な魔術が使えるので、高位貴族は優れた血を掛け合わせて、その力を維持してきた。


その中でも光属性は滅多に現れない希少な存在で、辺境の汚染地区に湧く瘴気を浄化できる唯一の手段でもある。

今のところは大きな問題ではない。けれど拡大したら人間の住む場所がなくなっちゃうから王家としては捨て置くこともできない。

今は、光以外の魔術師たちが汚染地区から魔獣が出て広がらないように応対している。

魔力を誇るものは攻撃魔術や、それを防ぐ防御魔術を用いて魔術師として優遇される。


だが、魔力の少ない者は、日常生活に使う程度の魔術しか使えない。

ただし水属性だけは、特殊な訓練を積めば治癒魔術に対応できる。

水魔術に適性のある者は、治癒士を目指すことが多いらしい。



原作ではヒロインが突然光属性を発現し、保護対象として王太子に生徒会役員に勧誘された。

そうして、うっかり王太子に近づいてしまい、

アイリーンに嫉妬されて、嫌みや無視のパレード開催されてしまった。

(ちなみにアイリーンちゃんも生徒会役員に無理やり収まったっけ…)


それでもアイリーンとは幼馴染だから仲よくしようと頑張るが、

アイリーンは嫉妬をこじらせていく。さらに周りの嫉妬もあいまって、いじめられっ子に転落。

それでも心が折れずまっすぐひたむきに頑張る姿にキュンキュンしたヒーロー王太子に守られ、ヒロインもようやっと恋に自覚し、愛をはぐくみあう。


アイリーンは嫉妬からエリーゼを執拗に苛め抜き、それを知った王太子とその仲間たちは

エリーゼと共に悪役令嬢アイリーンに立ち向かい断罪。

負けたアイリーンちゃんは闇落ちして、魔王様になって復活。


魔族を引き連れて王国に攻め入る。そして魔王は瘴気をまき散らし、王都は壊滅寸前。

あわや闇の世界に落ちるところでヒロインは聖女に目覚めて魔王を討ち、王国を浄化して世界を救い、ヒーローに溺愛されてハッピーエンド、というベタな物語だった。


第三者目線で読んでるときは面白かったんだよー。

まさか闇落ち悪役令嬢に転生するまでは。


で、今はどのあたりかっていうと

「ヒロインもようやっと恋に自覚し愛をはぐくみあう。」←今ココ


生徒会室で二人のイチャコラシーンを見てしまったアイリーンこと「私」がですね

嫉妬のあまり「光魔術なんかに負けられない!」と一人で魔術の練習をして、あの事故に遭った。

という原作にはなかったシーンでのあの事故。


いやー、アイリーンちゃん何気に健気だったのね。

でも思い返すとだいぶ危ういメンタルで、あれは闇落ちの前触れだったのかも。


あぶねー、あぶねー。


闇落ちした挙句に退治されるってわかったら、そりゃ王太子から手引くよね。

たかが恋で人生棒に振れませんて。


確かにイケメンで実家も太くて性格も良い最高物件だけど、死んだら終わりだもの。


アイリーン自体もスペック高く実家は太いので、別に他の人選べないわけじゃない

ちょっと彼より落ちるけど、他にもいい物件はあるはずだもん。

長い人生もっと穏やかに過ごせる人のほうがいいじゃん。


ということで、まずやるべきことは筆頭婚約者候補から降りて、お婿さん探しね。


そもそも、前世を思い出してアイリーンの人生を振り返って気づいたけど、

筆頭婚約者候補って自称だよね。


だってベルモット公爵家は序列1位で王家と縁続きだ。

ちなみにお母さまは陛下の妹であったりするので、私とヒーロー君はいわば従兄妹。

なんなら低いが継承権だって持っている。

幼いころにヒーロー君に一目ぼれした私が、どうしても彼と結婚したいと言い張り、さすがに血が近すぎると反対されて、小さいアイリーンちゃんは納得できず、癇癪を起した。


物は投げる、花瓶は投げる、捕まえようとした侍従をひっかいて、お父様に蹴り入れて、泣くはわめくは大騒ぎした結果、私を納得させるためにしばらく婚約者候補として過ごさせることにした。

周りの大人たちは、時間が経てば落ち着くだろうと楽観的に考えていたのだ。


なんだよ『候補』って。

今だと冷静に思うよね。


そして本命婚約者は第二、第三候補の令嬢なのが実情である。


ヒーロー君は実情を知っているので、アイリーンを婚約者として認めていません。

なんなら女王様気質で傲慢な性格と小さいころに(今も)かなりなストーカー行為に遭い、嫌っております。現在も最小限の関わりあいしかせず、アイリーンちゃんを避けに避けまくっている。


そんな状況お構いなしで、相変わらずヒーロー君にご執心なアイリーンちゃんは学園でも夜会でも懲りずにまとわりついており、いつまでたっても恋の魔法から目が覚めないアイリーン。


それでも

成長するたびに上がる私のスペックを惜しんで、「結婚してもいいのでは」という声が王室や貴族の一部から出てきていた。

公爵家は、娘が王妃でもそうでなくてもどっちでもいいスタンス。ただ、これ以上喚かれるのは勘弁、と静観中

従兄妹だから絶対結婚できないわけではないからね。


で、事態は動かずここまで来たが、ここでヒロインの光属性が爆誕。

王宮はそりゃ大変となった


建国記によると、数千年前に魔王率いる魔族が人間界を侵攻した暗黒時代があり、

当時の人類は、「魔術」を凌駕する「魔法」の前に、王国滅亡の危機にまで追い込まれていたそうだ。

その時に、光属性を持つ女性が誕生して、魔王を倒した。

そこから光は闇に対抗する唯一の手段となっている。


(ちなみに魔王や魔族は魔術じゃなくて魔法を使うことがミソだったりする。基本、人間じゃないからかしらね。)


問題は、数百年ごとに魔族が攻めてきて、王国が危機に陥るたびに光属性の女性が誕生するということ。


だから、王宮としては「王国の危機が来る!!」ってなったのだけど…。

いまのとこ魔族が攻めてくる気配がないのよ。

うーん、そりゃわたしが闇落ちして魔王にならなきゃ魔族が攻めてこないわね。


しかも彼女(エリーゼ)は魔力量が少なく、浄化もまだ大したことはできない。

ぶっちゃけ、アイリーンに取って代わるほどの力はないのだ。

だからヒーロー(エルヴィン)も、表立って彼女を溺愛することはできないでいる。

そのため王家は、不安定なヒロインの代わりに、ハイスペックな私をまだ手放せない。

要するに、アイリーンちゃんは絶賛飼い殺し中なのだ。


さらに平和ボケして危機感の薄れた連中たちの公爵家(我が家)への忖度や、

第二・第三候補の令嬢の実家による牽制などで政は騒がしい。


おまけにエリーゼを「魔力量の少なさを技術でカバーするため神殿で特訓させる」と囲い込んでる、

神殿の連中たちも彼女を『聖女』に仕立て上げて政界に口を出したいようだ。


やはり彼女が持つ光属性は最強のカードだ。


結果、「やっぱりアイリーンよりエリーゼの方が良いのでは?」と考える人間が増え、

家門の中でも、王宮でも、私の扱いは実に微妙なものとなっていたのだ。


はぁ、こうやって考えると原作にはない思惑が見え隠れしていてちょっとげんなりしてきたよ。


ただこれ、ヒロインが光魔術を使いこなせるようになると

マジでアイリーンちゃん家門や王家にポイ捨てされるやん。

ポイ捨てされた貴族令嬢の行く末なんてろくなものじゃない…。


おう、もっと早く気づけよ、自分。


ということで、まずは婚約者候補から降りるために動きますか。



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