フェリクスの怪しい行動
すみません、本日1話のみの更新です
翌朝、清々しい太陽の光が差し込む食堂。
私は一人、黄金に輝く美味しそうなオムレツと新鮮なサラダ、そして焼きたてのパンとスープの香りに包まれていた。
(はぁ、昨夜は結局あんまり眠れなかったわ……)
あれからずっとアベルの報告や、あの暗紅色の魔石のことが頭を離れなかったからね。
一体、この世界はどうなっているのだろう。
すっかり原作から外れてしまったけど、魔王アイリーン誕生へと別な強制力が働いてそうで背筋が寒くなる。
この私が…、目の前の優雅な朝食を前に食欲も失せてしまうなんて。
エルヴィンの婚約者候補から外れれば、問題ないと思っていたのになぁ。
やっぱり魔王への道へ強制力が働いているのかなぁ…うひぃー。
「おはようございます、アイリーン様」
澄んだ美声の挨拶に顔を上げると、クリスティナと、クリスティナが支えるようにしてフェリクスが食堂に入ってきた。
「…おはようございます。お二人ともよく眠れまして?」
「はい、別荘の皆様にはほんとにいろいろと良くしていただいてありがとうございます。あの、アイリーン様、昨日は本当にありがとうございました。おかげで兄もわたくしもこのように無事でいられて、ほんとになんとお礼を申し上げてよいか…」
怒涛の勢いでお礼を重ねるクリスティナ、かわいいけどまずは落ち着こう?
フェリクスもまだ本調子じゃないのに深々とお辞儀してるし、ほんとに義理堅い兄妹ね。
「いいえ、大丈夫よ、お二人とも立ったままではなんですからまずはお座りになって。
朝食を用意させましたので、詳しいことは食事が終わってからにいたしましょう」
二人を席に座らせると、改めて三人での朝食が始まった。
ふと視線を感じて顔を上げると、フェリクスと思わず目が合った。
けれど目が合った瞬間彼はさっと視線を逸らす。
(……?)
気のせいかと食事を続ければ、やはり視線を感じて…とそんなことがもう5回も続いている。
なによう、なんか文句でもあるのかよう。
やっぱりあれかな、昨日、弱音を吐いたところを見ちゃったから、誰にも言うな的な感じの威嚇なのかしら?
あまりに執拗に視線を感じるので、ムカつくから今度はこっちもにらみ返してやった。
…あれ?いつも氷のように冷徹無比な彼の頬が、ほんのり赤に染まっている。
やっぱりあんなひどい怪我したんだもの、熱も出るわね。
自分から体調悪いって言い出せなくて気づいてほしくてこっちを見てただけなのかな。
「フェリクス様、 お顔が赤いようですけれどやはりお身体の加減が……」
「…いや、大丈夫、…だ」
彼は私から視線を逸らすと、何も塗っていないパンを虚無の表情で見つめたままフリーズしている。
どうした?
「ほんとに大丈夫ですの?ご無理は良くないですわ」
「あ、ああっ。ほんとに体は問題…ない…」
体調が悪いわけではないのか。
じゃあなにか言いたいことでもあるのかな?
そうおもって彼をじっと見つめていると今度はスープを掬う手元が微かに震えているし、
フェリクスがまるでただの挙動不審な人になっている。
「あ、あの……お兄様? スープが冷めてしまいますわよ?」
あげく隣でクリスティナ様が心配そうに声をかけるが、
「あ、ああ、そうだな……」
と彼は心ここにあらずな返事ばかり。
「ねぇ、ハンナ。昨日の治療は問題なかったのよね。変な後遺症が出たとかじゃないわよね」
思わずそばに控えていたハンナにこっそり耳打ちしてしまった。
「ええ、問題ございません」
「だけど、ちょっと熱がありそうよね。仕方ないのかしら」
「…おそらく、精神的なものだと思います。命に別状はございません」
ハンナはフェリクスの異常な行動を見ても問題ないときっぱりと断言した
「そう、ならいいけど…」
とりあえず死なないなら放置でいいか。
私は首を傾げながら、冷めないうちに自分のオムレツにナイフを入れた。
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