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二つ目の魔石

「お嬢様、おかえりなさいませ。……随分とお疲れのご様子ですね」


ハンナは甲斐甲斐しく動き回り、夜着への着替えを手伝ってくれる

彼女の慣れた手つきに身を任せていると、張り詰めていた緊張がようやく解けていくのを感じた。


「ええ、今日は本当にいろいろなことがありすぎたわ。クリスティナ様の様子は?」


「はじめは興奮なさっておいででしたが、ロドゴ令息のお怪我が治癒魔術で落ちついたことをお話ししますと、安心したようで今は静かにお休みです。お嬢様も、今夜はもう何も考えずに休んでくださいませ」


ハンナが用意してくれたホットミルクを飲んでいると、部屋の扉が控えめに叩かれた。

きっとアベルだろう。

夜着の上にガウンをきっちりと羽織り部屋に入るよう促す。案の定、無表情のアベルが入ってきた。


「お疲れ様、後始末はどう?うまくいったかしら」


ロドゴ兄妹は宰相閣下に黙ってこちらに来ているからまだ公に取り締まれない。

生き延びた黒装束の男たちは一旦公爵家の地下牢で預かってもらうことにして、魔獣の死体についてはどうしようかと思っていたのだけれど…。

アベルは想定外、いやある意味想定内の報告を行ってきた。


「指示通り生き延びた怪しい男たちは公爵家へ引き渡しました。リーダー格と思われる男は残念ながら…。奴の所持品からは怪しげな薬と手のひらサイズの球体が一つ見つかっております。それと魔獣の死体についてはやはり前と同じことが起きています」


アベルは一旦、口を閉じ胸元から革袋を取り出す。


「仕留めた魔獣はあの後、霧のように霧散し後にはこの石だけが残されていました。」


アベルが革袋から取り出し、机の上に置いたものはあの時と同じ鈍い光を放つ暗紅色の魔石。


私はその不気味な石をじっと見つめた

原作の記憶を辿っても、あんな魔獣も、これほど不気味な魔石が頻出するイベントはなかったはず。


(はぁ、これで怪しい魔石が二つ。ねぇ、これ持ってることで逆に断罪されたりしないよね)


『国家滅亡を企んだ首謀者』なんて濡れ衣を着せられて、エリーゼに聖なる力で成敗される、

なんてね。はははは…っ


て、そんな展開、マジ笑えないんだけどー。


だけど、あり得そうで怖い。

しかし魔石を放置するわけにもいかないから、私が管理するしかない。


「……報告ありがとう。アベル、その石を預かるわ。それからこのことは決して他の誰にも気づかれないようにね」

「御意」

短い返事とともに、アベルは闇に溶けるように下がっていった。


(…こんな怪しい魔石が二つも…。うへー、とりあえず誰にも見られないようにしなきゃ)


私は預かった魔石を先に手に入れていたものと一緒に宝石箱にしまい込み厳重に保管する。


そうして重い溜息をつき、ようやくベッドに潜り込んだ。


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