よばれてとびでてじゃじゃじゃーん!
アイリーン視点に戻りました。
緊迫した空気を切り裂いて、私は叫んだ。
「よばれてとびでてじゃじゃじゃーん!」
……。
……あれ、まだ終わってなかった?
チャーミングにポーズを決めてみたものの、現場はシーンと静まり返っている。
いやね、嫌な予感はしてたのよ。
クリスティナをあのへんな男たちから守って無事に返してからも胸のざわつきが消えなくて。
闇落ちや断罪回避のために動いたら原作をかなーり改変しちゃったけど、よくあるシナリオの強制力っていうのが怖かったのよね。
だから、療養に出かける前に、お父様へ根回ししておいたのだ。
「もし万が一、クリスティナ様が私を訪ねてきて、かつ魔獣事件が絡んでいるようでしたら、すぐに私の療養先へ連絡を、もし彼女が困っているようなこちらに向かわせてください」って。
やっぱ、近くで見張っておくのが一番でしょ。
「そんな事態にはならないだろうが、その時はそうしよう」
お父様は不思議そうにしながら、軽い返事だったけど。 まさかまさかの一大事ですよ。
別荘の家令が持ってきた知らせはまさに彼女の生命に関わる緊急事態だった。
強制力マジこわっ。
お父様からも「指示通りそっちに向かわせた」と連絡があったけど、嫌な予感に背中を押されてアベルと迎えに来てみれば……。
なんか、やべーやつらとフェリクスが絶賛戦闘中じゃないの。オーマイガー。
アベルに先に行ってもらったから、もう片付いてると思ったのにまだだった…。
おかげで、敵の黒装束たちまでポカーンとしちゃってるじゃない。
恥ずかしすぎる。
私たちの登場に呆然としているのは敵だけじゃなくてフェリクスとクリスティナもだった。
でもとりあえず、こいつら片付けてからじゃないと話もできやしない。
しかもフェリクス、すごい怪我してるじゃない。
大丈夫かしら。
気まずい沈黙を破ったのは、意識を持ち直し武器を構え直した黒装束たちだった。
アベルよりたやすいと踏んだのか、男たちは一斉に私へと狙いを定め攻撃を仕掛けてきた。
容赦なく私の首筋を狙って剣を振り下ろされる。
「術式廻魔 水魔・水界瀑布」
「術式廻魔 風魔・翠嵐断月」
魔石を埋め込んだ小さな扇を振りながら詠唱を唱えれば、その切っ先が届くよりも早く、私の足元に展開された2つの魔術陣が輝きを放ち、
一瞬にして現れた水流が猛り狂う濁流へと姿を変え敵の足場を奪い、突風が鋭利な鎌のように遅いかかり風の刃が黒装束たちの動きを封じる。
「なっ……がはっ!?」
水に溺れ、風に刻まれ、
黒装束たちはさっきまでの威勢はどこへいったのって感じで、文字通りまな板の上の鯉状態となって、私の前で転がった。
フハハハ!アイリーンちゃんの実力思い知ったか!
実は温泉効果か体調も戻りつつあったし、何より当て馬2号…もといリカルドの助言で、魔石を取り寄せておいたのだ。
淑女らしくそれを鉄扇…コホン、この可愛らしい小さな扇に埋め込んだ。手になじむそれを使えば前ほどじゃないけど、無事に魔術が使えるようになったんだよー。
だからあの過保護なアベルが、私を置いて先に現場へ突っ込むのを渋々ながら了承したってわけ。
だが敵もさるもので影に潜んでいた奴らが魔術を避けて直接私に襲い掛かってくる。
1人が鋭い突きを私に食らわせようと剣をむけ、疾風のごとく飛び込んできた。
それを颯爽と剣をよけて足技をかけ容易く投げ飛ばす。
へへん、アイリーンちゃんは体術も完璧なのだ。
さすがハイスペック!
それを見ていた残りの奴らは途端に警戒を強め、ジリジリと間合いを図り、今度は死角を突くように複数で一斉に飛びかかってくる。
それを鉄扇で払いつつ蹴りを見舞っていく。
が、さすがに闇に生きるものたちなのか、頑丈だ。
打撃を受けてもすぐさま受け身を取り、起き上がってはまた無表情に剣を向けてきた。
しつこい、うん、もう対応めんどいな。
「風魔・裂空乱舞」
私の中心に猛烈な竜巻が発生し、敵たちを上空に巻き上げそ逃げ場を与える間もなく力任せに地面へ叩きつける。
「ふぅ」
倒れ伏す敵たちを一掃し、パチンと扇を閉じる。
ふと、アベルの方に視線を遣ると、どうやら彼はリーダー格と思われる男と対峙しているところだった。向こうも相当の腕を持つ魔剣士らしく、剣に火
を纏わせながらアベルを討ち取らんと怒涛の連撃を繰り出している。
だが、アベルはすべての剣筋をあっさり見切り、返しの一刀で男の首元を刈り取りにかかる。リーダー格は青ざめた顔で間一髪かわしたものの、大きく後ずさった。
間一髪で死を免れたとはいえ、アベルの不気味なほどの余裕に、隠しきれない焦燥を募らせている。
「アアアァァァァァァァアッ!!」
ヤケクソのような咆哮がむなしく響き渡る。
んもーうるさいなぁ、近所迷惑だよー、おじさん。
男は再び炎の剣を構えてがむしゃらに飛びかかったが、アベルはその渾身の一撃を、まるで子供の手をあしらうように、刃先で軽く遊ぶように弾き飛ばした。
私たちの乱入で、さっきまで優勢だったはずの男たちが目に見えて焦り始めていた。
「クソッ……!」
不利を感じたのか、追い詰められたリーダー格の男がアベルから距離をとると、懐からあの時と同じテニスボールみたいなものを取り出し地面へと叩きつけたのだ。
直後、優に3メートルは超える禍々しい長い爪を持ったヒグマの魔獣が地面を揺らして現れた。
『――グオオオオォオ!!!』
ヒグマは雄たけびを上げて鋭い眼光で私たちに殺意を向ける。
ちょっとまって、うそでしょ…。
こんなの「聞いてないよお」と某お笑い芸人の声が頭をかすめる。
そう考えた私は悪くない。
アイリーン( ̄□ ̄;)!!
「ちょっ、フェリクスやばくない?アベル先に行ってよ」
アベル(  ̄- ̄)
アイリーン( ;`Д´)
「マジ死んじゃうって!早く行け~!!
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