フェリクス・フォン・ロドゴの戦い② ~フェリクスside~
こいつらはいったい何を言っている?
クリスティナが目的…?
「ふざけるな」
怒りのあまり、地を這うような低い声が漏れる。
馬鹿なことをいうな。妹を見捨てるくらいなら…死んだほうがマシだ。
「命が惜しくて妹を差し出す兄がいるか!」
そうだ、自分は…彼女を守ると決めたんだ。
「……そうか…それは残念だ」
対峙する黒装束の男が、わずかに目を細める。
「大人しく渡せば、命だけは保証してやったのに」
男が指をパチンとはじいた。
直後、乾いた音が響き、馬車を包んでいた風盾壁が内側から軋み始める。
そのまま防壁に亀裂が走り、空間そのものが歪んでいくと、
――パキィンッ!
硝子が砕けるような轟音とともに、守護の壁が霧散した。
「クリスティナ!!」
そちらに意識をそらした一瞬、さらに首元に剣が押し付けられる
「お兄様!!!」
「だめだ、出るなぁ!」
兄の危機を察したクリスティナが、耐えきれずに馬車の扉を開けて叫んでいた。
「やめて…い、行きます。わたくし、行きますから…お兄様に手を出さないで!!」
「話が早い」
男たちの手が、彼女へと伸びる。このままでは妹が連れていかれてしまう。
焦燥に駆られ手を伸ばすが、首元の剣がさらに食い込んだ。
動けば届く前に喉を裂かれる。
ちくしょう!
このまま目の前でさらわれるのを指をくわえて見ているしかないのか?
――ズガァァンッ!!
突如、クリスティナと男たちの間の地面が爆発したかのように跳ね上がった。
「なっ……!?」
そういったのは、自分か敵か。
そこに出現した巨大な岩の壁。
黒装束の男たちは、クリスティナに触れる寸前で強固な土の盾に阻まれ、たまらず後退する。
だが、追撃はそれだけでは終わらなかった。
「ガハッ!?」
土煙を切り裂いて突き出されたのは、鈍く光る一振りの剣。
その壁の隙間から正確に放たれた一突きが、リーダー格の男の肩を深く貫いた。
「誰だ……ッ!」
男が呻きながら飛び退くと、そこには一人の人物が音もなく立っていた。
右手に抜き身の長剣を下げ、凍てつくような鋭い眼光を敵に向けている。
「術式廻魔 土魔・地円環」
低く響く詠唱。
クリスティナを中心に周囲の地面が生き物のようにうねり、不可侵の円環防壁を作り上げた。
剣筋の鋭さと大地を統べる圧倒的な魔術。
その実力を前に、現場の空気が一瞬で塗り替えられた。
(新たな敵なのか…?いや…あの男は、確か…)
【作者からのお願い】
ここまでお読みいただきありがとうございます!
少しでも「面白い」「続きが気になる!」と思ってくださったら、ページ下部にある
【ブックマークに追加】と、その下にある【評価(★★★★★)】をぽちっと押して応援していただけると、執筆の物凄い励みになります!
どうぞよろしくお願いいたします!




