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フェリクス・フォン・ロドゴの戦い① ~フェリクスside~

ベルモット公爵令嬢のもとに向かうべく、俺とクリスティナは夜の街道を急いでいた。

本来なら護衛をつけるべきだが、父に知られる前に動く必要があった。

大仰な護衛など一令息では動かせない。


「寒くないか」

「……大丈夫です」

嘘だ。返事をしたその指先は白く震えている。

きっと怖いのだろう。

幼いころから魔力なしのレッテルを貼られて挙句父親にも見捨てられた妹。

親にさえ死を望まれ一度は全てを諦めたのに、生きられるかもしれないと希望を持ってしまった。

けれどその希望が踏みにじられたら…

自分はもしかしたら残酷なことをしているのかもしれない。

もし追っ手に捕まり無理やり修道院に連れていかれたら、自分は父親に逆らえるのだろうか?


自問自答を断ち切るように、自分は間違ってないと心を鼓舞したその瞬間まわりの空気が変わった。

「止まれ」

何者かが馬車を止めた。

盗賊か? もしや父の追手だろうか…。

だが、すぐに違和感が胸を掠めた。

ただの盗賊にしては、これはあきらかに静かすぎる。

馬車の中にいるのに背筋を這う威圧に肌が粟立つ…

これほどの手練れた連中は、さすがに父の私兵でもないだろう。一体何者だ?


考えているうちにどうやら、囲まれたようだ。

前方、三、後方、四、か?いやもっといるかもしれない


「クリスティナ、絶対に外へ出るな」

答えを待たず飛び出し即座に魔術陣を展開させる


「術式廻魔 風魔・風盾壁(ふうじゅんへき)」

足元に展開した魔術陣が淡く発光する。

瞬間、圧縮された風が爆ぜ、馬車を中心に透明な盾が張られた。


同時に黒装束の男たちが姿を現した。やはり父の追手ではなさそうだ。

しかもこいつらやけに統率の取れた動きだ。何者だ?


「風魔・渦圧陣(かあつじん)!」

圧縮した風を地中に叩き込む。

防御魔術を展開させながら攻撃魔法を繰り出す。

爆ぜる衝撃で対面していた男が一人が吹き飛んだ。

が、やはり力を分散してるだけあって威力が弱いか…

次の瞬間、三方向から殺気が放たれ一気にが自分に向かって攻撃を仕掛けてきた。

火球が三方向から自分に向かい迫ってくる。

身体をひねり、剣で攻撃を叩き切りながら紙一重で回避する、が、止まることのない攻撃は続く。

よけ続けているが熱風は頬をかすめ、体力が消耗していく。

このままではまずい、

倒れていた敵を盾にして、体制を整えようとしたときに火球が止んだ。

だが一息つく暇もなく、容赦なくもう一人が剣で切り込んでくる。

それを持っていた剣で受け流すと再び火球の攻撃が飛んできた。

こいつら、魔術師と剣士と混ざっているのか…1人でこの人数を相手にするのは厄介だな。

だが、やるしかない。


「風魔・微塵界(びじんかい)」

周囲の空気を極限まで細分化し視界を歪ませるほどの乱流を発生させ酸素濃度を一瞬で奪う。

自分に迫っていた炎が、不自然に揺らいだ。


「なに……!?」

爆ぜるはずの火球が不完全燃焼を起こし霧散すると、敵は驚愕に目を見開いた。

その瞬間、真空に近い状態と急激な気圧変化に耐えられず周囲を取り囲んでいた他の敵たち男たちが一斉に胸を押さえ、苦悶の声に跪いた。

統率の取れた動きが、初めて瓦解する。


(今だ、この隙に……!)

近くにいる数人の敵を剣で叩きのめしていく。

だが、敵も精鋭だった。

「火魔・焦熱噴破(しょうねつふんぱ)!」

酸欠に喘ぎながらも一人の術師が執念で魔術陣を展開すると高熱の大きな火柱が出現し自分めがけて向かってくる。


「風魔・真空鎌鼬(しんくうかまいたち)!」

こちらも即座に術式を展開し放射状に放たれた真空の刃が、迫りくる火柱を真っ向から切り裂き左右に散らした。

さらに、その勢いのまま突風を男の懐へと叩き込む。

火魔術を仕掛けた男は、肺を圧迫され、断末魔すら上げられずに吹き飛んで倒れ込んだ。

(よし、手ごたえがあった。行けるか……!?)


だが、勝機を見出したと思ったのは、自分の甘さだった。

術式の維持に意識を割いた、ほんの一瞬。

「……甘いな」

鼓膜に直接届くような冷徹な声が響いた。

真空空間など意に介さないかのように、一人の剣士が乱流を切り裂き、凄まじい踏み込みで俺の懐へ滑り込んできた。

自分に向かってきた鋭い剣先を持っていた剣で薙ぎ払い相手の胸元に向かって切り込む。

だが、相手も察知したように一歩後ろに下がり、あっという間に体制を整えたかと思うと

頭上から振りかぶる。


(速い!真正面は無理っ)


「風魔・風脚瞬閃(ふうきゃくしゅんせん)」

足元に爆風を起こし横へ跳び攻撃を受け流す。

が、切っ先は何とか回避したものの、左腕が剣をかすめていた。

おまけに着地の衝撃で右足に激しい軋轢音がしたと思えばうまく立てない。

あの音…骨が折れたかもしれない…。

左腕は血液が腕を伝うが興奮しているせいか痛みは感じない。


「…ッウ」

だが足は…だめだ、感覚がない。うまく立つことができそうもない。

このままではやられる。

なんとか気迫で左足で自立し、敵に向け剣を構える。

ここで、あきらめる事なんてできやしない!


ふと、男たちの攻撃が止んだ。

こちらの様子を値踏みするように重苦しい沈黙が流れる。

だが一人で、しかも手負いでは圧倒的不利だ。どうするべきか…。


圧倒的威圧を放っている男が一人、自分に近づいてくる。

直後、周囲の者たちが一歩下がった。この男がリーダーなのかもしれない。

考える暇さえ与えず、自分の動きを封じるように男の剣が首筋を狙って突き出された。

少しでも動けば首が飛ぶ。


(万事休す、か…)


男は冷徹な眼差しで、低く宣告した。

「妹を置いていけ。さすれば、お前の命は助けてやる」

「なに、を…」

言ってるんだという声は出なかった。


【作者からのお願い】


ここまでお読みいただきありがとうございます!


少しでも「面白い」「続きが気になる!」と思ってくださったら、ページ下部にある

フェリクスも魔術剣士です。


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