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フェリクス・フォン・ロドゴの回想① ~フェリクスside~

前回が短かったので続けて公開しちゃいます

宰相の息子として育てられた自分は手のかからない息子だったと思う

それは、双子の妹クリスティナが魔力をまったく持たずに生まれてきたからだ。

貴族社会において、それも高位貴族において“魔力なし”というのはあり得ない。

貴族は魔力の高い者同士で婚姻し、より優秀な子を残す。

侯爵家である我が家も例外ではなかった。

けれど、クリスティナは何も持たずに生まれた。

本来であれば母の不義が疑われてもおかしくない。

しかし幸い、双子の兄である自分が高い魔力を持っていたため、その疑いは免れたが。


けれど、周囲からの圧力に晒された母は、出来損ないの娘を産んだ、と自らを責め次第に心を病んでいった。

クリスティナをいないもののように扱い始め、父もまた仕事にかこつけて家にほとんど寄り付かなかった。そのせいで幼いころの世界は自分と妹だけだった。


自分よりも小さく生まれてしまった妹は体も弱く、季節の変わり目には必ずと言っていいほど体調を崩した。

一方で自分は物心がついたころに父に連れられ、将来の側近候補として王太子であるエルヴィンに引き合わされた。

彼とは気が合い、まるで兄弟のように育った。

やがて公爵家の令嬢だったアイリーンとも顔を合わせるようになったが、彼女はエルヴィンにべったりで、男の自分にさえ近寄るなと威嚇してくる始末だった。

エルヴィンはそれを迷惑そうにしており、自分と過ごす時間を好んでくれていた。


やがて母の依存先は、王太子に重用される自分へと向けられた。

自分にだけは甘く、優しく接してきたが相変わらずクリスティナには目もくれず、いないものとして扱っていた。

正直、そんな母を冷めた目で見ていたが、所詮は幼い子供である自分は愛情に飢えていたんだろう。母の手をとり、見かけだけの親子関係はうまくいっているように見えた。


その陰で、クリスティナはどうだったのか。

屋敷の使用人の中には、両親に顧みられない彼女に冷たく当たる者もいた。

父や母に見捨てられ、頼りの兄は王宮に遊びに行ってばかり…

一人ぼっちで家に取り残されていたクリスティナはどう思っていたのかは知る由もなかった。


それでも彼女は、いつも微笑んで、お兄様と慕ってくれた。

そんな時は優しい兄を演じていたが、彼女の心と正面から向き合ったことは一度もなかった。

十歳の頃に母は亡くなった。

双子出産の負担と心労が祟ったのだろう。

父はますます家には戻らなくなり、自分もまた、王宮で剣や魔術の鍛錬と側近教育にのめり込んだ。

エルヴィンと一緒に剣や魔術を学ぶことが楽しくてクリスティナのことは頭の隅へと追いやられていった。

それに剣の稽古であればアイリーンは加われない。だからこそ、ことさら剣に打ち込んだ。

正直この時期はクリスティナがどう過ごしていたのか知らない。

ただ、いつも寂しそうにしていたような気がする。


学園に入る頃、アイリーンは王太子妃教育で忙しくなっていたが、それでも少しの時間を作ってはエルヴィンを追ってきた。自分たちはそれから逃げるように遊び回った。


そうして学園に入学すると、アイリーンの傍にいるエリーゼに目が留まった。

彼女はアイリーンと共にいたため、最初は警戒していたが彼女のひたむきさと、守ってあげたくなるような危うさに気づけば心を奪われていた。

そうしているうちに彼女が突然光属性に目覚めたため王家の保護対象となった。護衛の目的を兼ねて生徒会へ招き入れ一緒に仕事をし、共に過ごすうちに想いは募るばかりだった。

エルヴィンも同じ気持ちだと気づいていたのに、心が止められなかった。

アイリーンもエルヴィンの気持ちに気づいたため、何かにつけてはエリーゼにつらくあたっていた。

どうにかしないと、と思っているうちに、彼女が学園で事故にあった。

正確には、自身の魔術で自滅したのだが、学園は事故として処理した。

結果、アイリーンはその事故で体調を崩し長期休学となり、エリーゼは自責の念にかられた。

「自分のせいでアイリーン様を追い詰めた」と激しく落ち込んでいた。

おまけに、アイリーンの取り巻きたちから責められ、さらに憔悴していった。


そんな彼女を支えたいと願うのは、王太子の側近としてあるまじき独占欲だった。

エルヴィンに対し罪悪感に苛まれていた、そんな折だった。

「クリスティナ様が見当たりません」

クリスティナと同じ教室の令嬢からそう報告を受けた。

保健室に行くといって戻ってこないので様子を見に行くと、来ていないといわれたそうだ。


仲が悪かったわけではない、顔を合わせることが減っただけだの双子の妹。

おとなしく学園をサボるようなことはしないはずのクリスティナが消えた、と。



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