第七十八鈴 後日譚(惑星調査編)
響き達スキル保有者が惑星909からいなくなってから生物研究者のルミリとエンジニアのタモはこの惑星の開拓者として大忙しであった。
天界世紀111年、惑星909ではパラダイス3の着陸を迎え、さらなる町の発展に勤しんでいた。
ルミリとタモはパラダイス3の船上からこの惑星に建てられた街を見ていた。
「タモさん、ミドルロケットで新たな湖の建築ありがとうございます」
「いえ、たまたまあった巨人の足跡に山の水を繋げただけですよ。そんなたいそうなことはしていません。それよりもルミリさんの新たに作った薬用植物、この惑星に耐性のない我々の体調を良くしていると町の人達から大変好評ですよ」
「本当?それは良かったわ」
生物研究者のルミリとエンジニアのタモはこの惑星の発展に貢献して今ではこの惑星の開拓者としての存在にまでなっていた。
「タモさん!ルミリさん!大変です!」
二人のもとにパラダイス3の調査員が報告にきた。
「落ち着いて、どうしたのかしら?」
調査員は焦りながら報告をする。
「クレーター付近に先住民が現れたと報告がありました!」
「先住民!?」
「確か響さん達と冒険していた際、先住民の正体は空間スキルを使う魔法使いと聞いていましたが、またその人たちが戻ってきたということ?」
「ルミリさんとりあえず、向かいましょう!ミドルロケット:ロデオ イグニッション!」
タモは隣に置いていたミドルロケットのスラスターを放ち空に舞う。
「私も向かいます!ラズ!お願い!」
グオオオ!!!
上空から舞い降りるドラゴンにまたがりルミリもクレーター中心部へ向かうのであった。
◇
クレーター中心部には二人の人間が立っていた。
「そうかそうか。頑張ったなミル…」
めんどくさそうな顔をしながら少女に声をかける少年は勇者ハリオ。タイムリープのスキル保有者の異能力者である。
「ハリオ!いつもそう言ってるけど全然気持ちがこもっていないの!私こんなにもすごいのに!どうして信じてくれないの!」
ハリオに怒っているのはミル・クーキィ。魔法の国にて空間スキルを取得した6人の魔法使いの1人。獣人化のスキルを保有している異能力者である。
「だいたい!私はハリオの為にここまで連れてきてあげたの!もっと感謝してくれてもいいの!」
「だがな。俺の探している響には会えていないからな」
「でもここまで濃厚な力の反応、絶対ここにいた形跡はあるの!!」
「つまり勘違いだったってことだろ?」
「違うの!響達の匂いもしっかりとあるの!ミルはすごいの!もっと感謝してほしいの!」
「わかった。わかった。じゃあ、次の世界へ移動しよう。ゲートを開けるか?」
グーーーー…
ミルのお腹が鳴る。
「またか」
「これはしょうがないの!ミルは空間スキルを使う力を獣人化スキルの力を使っているから、他の人達よりも力を使いすぎちゃうの!」
「わかったミル。さっきまでいた木の上に果実があった。ハリネズミの姿に変身して食べれば満腹になるだろ」
「なっ!ハリオ!なんなの!その私をペットみたいな扱いして!許さないの!」
「お前は俺のペットだろ?」
「ミルはペットじゃないの!!」
ミルはハリオにツンツンと怒っていた。
そこに爆風が舞い降りる。
「な!あれは!」
ハリオの前にはルミリが乗るドラゴンが降り立った。
「ひぃい!!また怖そうな生物なの!」
ミルはハムスターの姿になってハリオの肩にしがみつく。
「ミル、しっかり捕まっていろよ」
「ミルは捕まるのには自身があるの!」
ラズべザンダーがハリオの前に降り立ち、ルミリがゆっくりと歩いてきた。
「初めまして。私はこの惑星909の生物研究員のルミリと申します。そしてこの子は私の相棒のラズべザンダーです」
ルミリはゆっくりと頭を下げる。
「この世界の住民…だな?俺は勇者ハリオだ。響という少女を探して異世界旅をしている」
「響…?もしかして響さんですか?」
ルミリは聞き覚えのある名前に反応する。
「お前、響を知っているのか!?響は今どこにいるんだ!?」
「残念ながら、今この世界にはいらっしゃりません。半年前にこの惑星を私達と冒険したのち別の世界へ旅立ちました」
「そうか。やはりここには用はなかったな」
ハリオは深く肩を下げる。
「だから行ったの!ミルは正しかったの!」
ハリオの肩に乗ったミルはペチペチとハリオの顔を叩きつける。
「ルミリさん気をつけて下さい!相手は2人います!」
ガチャン!
ルミリの隣にミドルロケットに乗ったタモが降り立つ。
「ひぃ!また変なのが出てきたの!」
「おいミル悪いがお前がいることはバレているぞ?」
「まだバレてないの!ミルは今ハムスターなの!」
「すいません、お二方。あなた達はスキル保有者でしょうか?」
タモはハリオに話しかける。
「そうだ。俺はスキル保有者だ」
「通りで森のマスクローチ達が静かだど思いました。あなたが倒したんですか?」
「あの虫達のことか?そうだ俺が倒した」
「そうなんですね。どうしましょうルミリさん」
「そうですね。異世界からきたハリオさんを助けたい気持ちはあるのですが、少し覚悟を決めましょうか」
「おい、いったいなんの話しだ!?」
ハリオはタモとルミリに聞いてみる。
「実はですね。マスクローチの習性を改めて確認したところ、仲間の死骸のから倒された体液をつけるらしく。仲間の体液が付着している相手に対して非常に攻撃的になるらしいのですよ」
「は?」
「ハリオさん、あなたからはその匂いがとてもします。そしてあなたはスキル保有者。この世界の生物達はスキル保有者を最優先討伐対象に選ぶ習性があります。なので、えっと、危険だわ?」
ドッ!ドッ!ドッ!
マスクローチの群れが地中から湧き出てくる!
「ひゃあ!またさっきの虫達なの!」
ミルは悲鳴をあげる。
「安心しろ。無双してやる」
ハリオはリズムよくマスクローチの攻撃を避ける。
ダッダッダ!
そして武器であるレンガでマスクローチの頭部を殴りつける。
バッシュ!バッ!バッ!
ハリオの戦い方はまるで響のノーツ化スキルの動きに似ているようであった。
「あの動きって響さんの…いや気のせい?」
ハリオは響との戦いの後、タイムリープのスキルでいかにリズミカルに相手を倒すことを目標に修行していた。
ダダダダダダダダダダ!ダッダッダ!
ハリオは周りにいるマスクローチを殲滅した。
「これで最後か?ものたらないな」
「その桁外れの強さ。やはりスキル保有者はレベルが違いますね」
タモはミドルロケットから出てハリオの元に向かう。
「初めまして。僕はこの惑星909でエンジニアをしてます。タモと申します。どうぞよろしくお願いします」
「ハリオだ。ところで響達と会ったと言っていたが、響はどこに向かったか分かるか?」
「いえ、響さん達の行方は分かりかねます…」
「そうか。そしたらやはりミルの回復を待つしかないのか…」
「ところでそちらのハムスターも異能力者でしょうか?」
ルミリがハムスターの姿のミルににっこりと微笑む。
「ひゃあ!バレてるの!」
「初めからな!」
ーーーチリン!
ミルは変身を解除して正体を明かした。
「わ、私はミル!ミル・クーキィーなの!魔法の国の指導者アン様のもと異世界の侵略を行ってるの!」
「魔法の国…侵略…!?」
ルミリはお姉さんのメッセージにあった魔法の国の侵略者を思い出した。
ふに〜
「いたいの!」
ハリオはミルのほっぺを引っ張る。
「俺のペットだ」
「ペットじゃないの!」
「えっと…お二人はいったいどういう関係なんですか?」
「俺は響を探している。響に勝つことが俺にとっての目標だ。そしてこのミルは異世界を渡るゲートを出せる。言わば俺の移動手段だ」
「ミルは移動手段じゃないの!」
ミルはハリオをペチペチと殴る。
「ミルさんのさっきの魔法の国というのは本当ですか?」
「そうなの!ミルは空間スキルを取得した優秀な魔法使いなの!」
「教えていただけますか?あなたのその変身する能力は他の世界の方から奪ったものですか?」
「そうなの!動物の世界でこのスキルを手に入れたの!異世界のゲートをあける空間スキルは魔法使い100人の魔力が必要なの。でもスキル保有者の力を奪還すると私1人でも力が使えるの。指導者アン様は私たちに他の世界の異能力者の力を奪還して1人で世界を超えられるようにとおっしゃっていたの」
「…それで、私の姉を殺したんですね」
「ひぇ?」
ルミリの目が復讐の目に変わる。
それに気付きミルはハリオの後ろに隠れた。
「悪いなルミリ。ミルの仲間が悪いことをしたのは察しがついたが、ミルは今の俺にとって大事な存在だ。その目でミルを見つづけるならば俺はお前と戦う」
「ごめんなさい。つい、殺気だってしまったわ。私は姉を殺した先住民を心の奥底で許していないですね。自分でもびっくりだわ」
「ルミリさん。この方々はどうします?」
「とりあえず、悪い方ではなさそうなので街に案内しますか」
そう言ってハリオとミルは宇宙船パラダイス3の着陸地点の発展した街に招かれた。
◇
「嬉しいの!こんなご馳走久しぶりなの!」
「この惑星であった爆発から約半年間パラダイス3の着陸もあってこの街は豊かになってきました」
「だとしても爆発落ちのスキルか。そんなものがあるんだな」
「ハリオじゃ絶対倒せないの!」
「ミルでも倒せないだろ?」
ハリオとミルはご飯を食べながら仲良く話す。
「ところでどうして2人はクレーターにいたんでしょうか?」
ルミリが尋ねる。
「ああ、ミルが強力な力を感じてな。響の匂いも感じたって言っていたからそこにいると思ったんだが」
「そうなの。でも何もなかったの。あったのはあんまり言いたくないけど動物の死骸だったの」
ミルはご飯を食べている間にあんまり口に出したくなくためらいながら言った。
「響さん達との冒険からあの場所でそんな戦闘はなかったと思うんですが…」
「タモさんは何か反応は確認できました?」
「いえ、私には何も。明日、再度お二人を連れて調査しにいってみます。ところで、ミルさんはどうやって気付けたんですか?」
「ふっふ〜ん!ミルは獣人化のスキルを持ってるの!化た動物の五感覚を使って調べることができるの」
「すごい便利な能力ですね!」
「そうだ。いいペットなんだ」
「だからペットじゃないの!」
「ねぇ!ミルさんもしよかったらあなたの体ちょっと調べさせてくれない?」
ルミリはにっとりとした笑顔でミルを見た。
「ひぇ!!怖いことは嫌なの!」
その夜パラダイス3でミルの叫び声が響き渡った。
◇
次の日クレーターの周りを四人が歩いていた。
「うう、もうお嫁に行けないの」
「ミルさん昨日は貴重なデータありがとうございます。私の知らない小動物の生態について詳しく調べることができました」
「もうルミリに関わるのは嫌なの!」
「ところでミルさん、クレーターの力はどちらから感じられましたか?」
「タモはそうやって話をすぐに変えるの!あっ!こっちなの!」
ミルは再び、ルミリとタモと出会った場所に連れて行く。
「うう、まだ残ってるの。気持ち悪いの」
ミルの指さす先には生物の肉片が落ちていた。
「本当に生物の死骸…いや、これって人間の肉片…?」
「ルミリさん?これって…」
ルミリはその肉片を手で摘み上げる。
「ひぇ!ルミリは怖いもの知らずなの!ミルは見てられないの!」
「タモさん…覚えてるかしら?これって響さん達とここにきた時にあった肉片の残骸だわ。それもまだ腐らずに逆に大きくなっている」
「どうゆうことですか?ルミリさん」
「信じがたいけど、この肉片は成長しているってこと…」
その時ルミリはトアという少年との記憶を思い出した。トアは爆発落ちのスキルを持ち爆発して消えていった。
「彼と話していた時こんなことを言っていたわ。『スキル保有者がいない時に復活をする』って」
「つまり、これもスキル保有者の能力ってことですか?」
「分からない。でも可能性はあるわ」
「肉片を拾って何を分からないこと言ってるの?」
「ミルよく見つけたな。ルミリ、タモ、この肉片の復活を止めることはできるか?」
「分からないわ。でも研究施設に入れて誰にも触れられないところに冷凍保存する。少なくても私達の命が尽きるまでこの生物の復活を食い止めるわ」
「そうだな。それがいい。他の世界に放り投げるというのも手かと思ったが、ミルのような侵略者が手にしてしまうこともあるしな」
「ハリオどういうことなの?」
「爆発落ちのスキル保有者は肉片になってもなお復活しているってことだ」
「うえ!?それってとても気持ち悪いの」
「そうだな。だが、それもミルが見つけてくれたおかげで対策できるかもしれない。よくやったなミル!」
「えへへへへ!そうなの!ミルはすごいの!もっと褒めるべきなの!」
ミルは大喜びでハリオを見下す。
「ハリオさん、ミルさん、ここまで協力していただきありがとうございます」
「いや、こちらこそ、ミルに飯を食わせてくれて助かった。これで響を探しに次の世界に行くことができる。ミルいけるな?」
「任せておくの!」
ーーーチリン
ミルはそう言って異世界のゲートを開く。
「ミルさんまた来てくださいね!」
「絶対ルミリにはもう会いたくないの!」
そう言ってハリオとミルはゲートの中に消えていった。
「またいってしまいましたね。ルミリさん」
「んーなんかこの感じだとあともう五、六人は異世界から来るんじゃないかと思ってるわ」
「確かにそうですね。とりあえず、この惑星を爆発させたスキル保有者を完全に封印しましょうか」
「そうね。私達が生きていく理由でもあるわ」
ルミリとタモはパラダイス3へ戻りこの惑星を爆発させたスキル保有者の復活を阻止すべく研究にあたるのであった。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
惑星調査編完結です!ここまで読んでくださり本当にありがとうございます。この章は3月ごろ春の暖かさで虫達がたくさん出始めた頃に描き始めました。生物達って不思議がいっぱいで面白いですね。また生物をテーマにした作品、ゲーム等の雰囲気を取り入れようとしましたが、本編の蛇足的な章だったので可能な限りコンパクトにまとめました。メインで考えている章とは違う章は10話以内に収めるようにいたします。よってこの章は伏線の章になりました。わかりやすいように次回の章で生物は出てきますのでお楽しみください。
改めまして最後まで読んでいただきありがとうございました。次回新たな世界での響き達の冒険が始まります。




