第七十六鈴 再生の力
この惑星についてからラズベザンダーというドラゴンが響達一行の後をついてきていた。ラズベザンダーはスキル保有者の危険性、この惑星の爆発がスキル保有者によって行われていることを告げる。その言葉にルミリはこの惑星で起こった爆発の真相を語り始めるのであった。
響達一行はルミリがこの惑星に着いた時の話を聞くのであった。
「ルミリさんトアってだれですか?いったい何を研究していたんですか?」
「これは私が勝手に始めた生物研究の一つ。私はこの惑星についてからルアナ姉さんのことを聞いてそれからずっとお墓に入り浸っていたわ。研究も手につかない。そんな状況。惑星調査も打ち切りで、もうパラダイス全体でめちゃくちゃ状態だった」
ルミリはトアとの出会いを話し始めた。
◇
天界世紀110年パラダイス2が惑星909へ着陸して数日後、ルミリは姉ルアナのお墓の前で泣いていた。
「姉さん…ルアナ姉さん…」
「ねぇ、人の死って悲しい?」
ルミリはハッと気づきお墓の目の前に目を向ける。
「へへっ!」
そこにはお墓の上に座り込む銀髪の少年がいた。
「ちょっと!姉さんの墓からどきなさい!」
ルミリは思いっきりその少年を引きづり下ろした。
「あー悪かったよ。君にとって大切な人だったんだね!でもさ…」
少年は表情を真面目な表情に変えてゆっくりとこちらを向く。
「別れを悔やむよりも出会えたことを幸せに感じないと」
「あなたはいったい誰?何者?」
ルミリは気が立った状態で聞いた。
「僕はトア!この世界のバランスを保っているものさ!」
「バランスを保っている?どう言うこと?」
「この世界にはスキル保有者がいたと思うんだ」
「…もしかして姉さんのこと!?」
「それもだけど、その力を奪った人もいなくなった。これは僕にとって好都合なんだ」
「どういうこと?」
「スキル保有者はいつも僕の邪魔ばかりしてくるんだ。僕は邪魔されるのが大っ嫌いなんだよね。だから彼らが消えるまで完全に再生しないでいたんだ」
「彼って誰?」
「不合理のスキル保有者だよ」
「ルアナ姉さんはもう亡くなっているわ」
「でもそのスキルは殺した相手に移っている」
「…どういうこと?」
「スキル保有者は殺した相手に移るんだよ。力の継承って言うのかな。ただし殺した相手がスキルを持っていないことが条件なんだ。うん、でもその人もこの世界から消えて無くなったよ」
「継承?姉さんは殺されたってこと?そしてその相手はこの惑星にいない?」
「うーん。僕には分からないけどこの世界逃げたんだと思う」
「そんなこと…できるの?」
「スキルには無限の可能性があるからね」
「そうなのね…」
ルミリはそう言って後退りをする。
「ねぇ、トア…あなたの目的は何?どうして私の前に現れたの?」
「僕はね、人の死を最高のひとときとして味わいたいんだよ」
「聞いて損した。悲しんでいる私を馬鹿にしにきたってこと?」
「違うよ。君の悲壮感はまだまだ足りない。だって僕は君のこと何も知らないからね」
トアはルミリに顔を近づける。
「教えて、君のこと。君の大事なもの。君の目標、たくさん知りたい。僕は友達が欲しいんだ」
「変わってるのね」
「昆虫の足をポケットに入れている人に言われたくないな」
トアは片手にマスクローチの脚を見せる。
「それは私がさっき回収したマスクローチの脚…あなた普通じゃないわね」
「ふふ、僕もスキル保有者だからね」
「ルアナ姉さんと同じ異能力者!?」
「そう、でも力はたまにしか使わないよ。それよりも普通の生活を行いたいんだ」
「どういうこと?」
「いっただろ?僕は友達が欲しいんだ。どう?ルミリ?僕の友達にならないかい?」
「どうして私の名前を?」
「有名人だろ?スキル保有者の身内として興味があったんだ。君なら僕のことも理解してくれるかなって思ってね」
「分からない。あなたはスキル保有者という情報を聞くだけでも最上位レベルで危険な存在。私はあなたの身柄を確保しなければならない」
「そんなつまらないことしないでよ。ほら見逃してくれたらさ。僕のとっておき教えてあげるから」
「な、なに?」
「再生する細胞だよ」
「再生する細胞?」
「僕は何度も死んでは生き返りを繰り返している。それはスキル保有者であるためでもあるが、僕のことを生物的に調べてくれる人は誰もいなかった。もしよかったら僕を調べてみたいと思わないかな?」
「意味が変わらない。そんな嘘臭い話のるわけないでしょ!」
ルミリが強く否定するのをみてトアは自身の片腕をマスクローチの脚で切りつけた。
「って何をしてるの!」
「見せてあげるよ僕の再生力」
トアは腕の切り傷からの血を見せびらかす様にルミリはに見せる。そしてその血は簡単に止まり傷自体も無くなっていた。
「え、なに?どういうこと?」
「僕は何度だって蘇ることができるんだ」
「それがあなたのスキルってこと?」
「スキルの一部って感じかな?これはスキルを使う上で都合良くできた能力。だが、人の再生を可能にする最強の力だろ?」
ルミリは喉から手が出るほど欲しかった。
姉の死を迎え、生物研究を行ってきて、蘇りの力は何よりも魅力的であった。
「…わかった。あなたのその再生する能力それの研究を条件に私はあなたの友達になってあげる!」
「ほんと!?嬉しいな!君の希望に満ちた目。すっごく大好きだ。よろしくねルミリ」
ルミリとトアは友達になったのであった。
◇
それから数日の間。ルミリはまるで周りが見えないほどにトアの研究に励んだ。
それは姉の死を経験し、周りの人達を失いたくないというルミリの強い意志であった。
「ねぇ、トア。あなたはこの惑星の人?」
「うん、そうだよ」
「家族はどこにいるの?」
「いないよ。みんないなくなっちゃった」
「この能力を持っているから、一人きりで生き残ってしまったってこと?」
「違うよ。僕が殺したんだ」
「へ?」
「どうしてそんなこと…」
「それが僕のスキルだからかな?」
「トアのスキル…?」
トアはスキルの話になるといつも話をはぐらかした。まるで自分の能力を隠しているようだった。
「…実験だけど…できたかもしれない」
しかし、それ以上にルミリはトアの再生の能力に没頭していた。ルミリは生命力の強いドラゴンの子供とトアの細胞を掛け合わせることに成功する。
「ルミリ、これが君の成果かい?」
「ラズべザンダー。まだドラゴンの子供だけど、あなたと同じように長生きするわ」
「不思議だね。全く僕の見た目をしていないのに。このドラゴンは僕の兄弟になった感じがするよ」
「そうね。トア。ありがとう。あなたのおかげで生き物の寿命を長くすることができる。助かるわ」
「ううん。僕も嬉しいよ。僕をしっかりと見てくれる人も設備も滅多になかったからね」
「でも、トア、あなたの細胞のたまに見えるこの赤いマグマの様な熱はいったい何?」
「僕は普通の人よりも体温が高いんだ」
「…そうなのね」
ルミリはトアの細胞をドラゴンの体に取り込む実験を成功させてからトアの細胞を使って人体実験を行うことにした。
◇
数日後パラダイスにいる護衛兵の中で志願者によってできた実験は一つ間違えれば死に至る危険な行いだった。
「では、名前と年齢をお願いします」
「ライ、28歳であります」
「ヨウ、30歳であります」
護衛兵から二人が出願された。
「今回行う実験はとても危険です。くれぐれも内密にお願いします。その上で命の危険性が非常に高いです。それを了承済みでしょうか?」
「はい。自分はパラダイスの為命を捧げるつもりであります」
「自分も同じです」
「分かりました。ではよろしくお願いします」
ルミリは二人を医務室に連れて行き、トアの細胞を注入していく。
「耐久性の高かったドラゴンに比べ人間の細胞は脆い。計算通りに行うけど、慎重に実際の様子を見ながら確実に成功させる」
ルミリはライにトアの細胞の注入を行う。
「ガッ!!ガッ!!!」
突然ライはアレルギーの発作を出す様に暴れ出す。
「ダメ!ストップ!ストップ!」
気を失うライを見てルミリはライを抱き抱える。
「失敗…」
「…いえ、大丈夫です。自分はまだ意識があります」
ライは必死に自身の無事を唱えた。
「しかしこれ以上続けるのは危険すぎます」
「ルミリさん、これはこれからの人類の希望でする。世界を変えるかもしれない実験です。最後までお願いします」
「…わかったわ」
「ガァッーー!!!」
叫び声が響いたが実験は無事に終わり、ライはトアの細胞との融合に成功した。
「自分もお願いします」
ルミリは次にヨウにも同じ血清を打ち二人ともトアの細胞の融合に成功した。
「バイタルも安定しているわ。実験は成功よ。二人とも協力してくれてありがとう」
「こちらこそ寿命を伸ばしていただきありがとございます」
ライとヨウは兵士でありもともと体力に自信があったというのもあった。しかし、ルミリはこの血清の実験を一般市民にも行い始めた。
「皆さん、この血清は皆さんの寿命を長くします。不意な事故や怪我からの回復を早めることができます」
パラダイスの人達の半分はトア血清を打ち、寿命を伸ばした。
◇
パラダイスから離れた森の研究所、ルミリはトアを呼び研究の成果を話し合っていた。
「ねぇ、ルミリ…君はすごいことを成し遂げたね」
「トアそれはこっちのセリフ。あなたのおかげで多くの人達を救えたわ」
「ルミリは僕の血清打たないの?」
「始めに血清を打ったライがアレルギー反応を出していたの覚えている?私は彼と同じアレルギーを持っているの。彼は体力的に耐えられたけど私には耐えられない。残念だけど、今の私には打つことができないわ」
「そうなんだね。残念だ」
「ねぇトア。トアの目的は果たせたと思うの。私と友達になるっていう目的。どう?楽しかった?」
「それはもうとても楽しかったよ!ルミリありがとう!とてもいい経験をさせてもらったよ」
「そっか良かった。ところでトアあなたが自分のスキルを隠す理由を教えてくれない?」
「ルミリ…まだ気になるのかい?」
「…」
「そんなに君が知りたいなら教えてあげるよ」
トアはゆっくりと顔を上げて話す。
「爆発オチのスキル。それが僕のスキルだ」
◇
「爆発オチなんてサイテー!」
「こら響まだ話の途中だぞ!」
話しているルミリに響はツッコミを入れるのであった。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
新キャラ「終焉の者トア」の登場です。彼は多くのスキル保有者との接触経験がある秘密多き少年です。
彼はこの惑星にて重要な存在です。次回物語のクライマックスです。どうぞお楽しみください。
爆発オチなんてサイテー!




