第六十七鈴 マスクローチ
異世界を渡って冒険をしている響達一向は生存者を探す生物研究員のルミリとエンジニアのタモと出会う。
人類を乗せてきたパラダイスという宇宙船の場所を確認する為、タモの乗ってきたミドルロケットの発電を行う生物を探す。
響とのなか、モサ子、ルミリ、タモの5人はミドルロケットのエネルギーを発生をさせるためにマスクローチという生物を探していた。
「なあ、ルミリ。そのマスクローチってどういう生き物なんだ?」
「旧世紀ではゴキブリという名前で生息してたわ」
「ゴキ…!?え、私達今からその生物を捕まえるんだよね」
「そうよ。でも大丈夫、さっきの食中植物のような毒は無いわ」
「いや、毒じゃなくて…」
「え?え?なになに?マスクローチって食べられるのかな?」
「モサちゃん食べるのはやめとこうよ」
「でもこいつからしたら昆虫も食事の一つなのか」
「皆さん。忘れてはいけませんよ」
タモがみんなに声をかける。
「そのマスクローチという生物は見た目がとても怖いんです」
「タモさんどういうこと?」
「ええ、そうね。マスクローチは知性のある生物に食べられないように工夫をして背中に人間の顔のような模様を出すようになったのよ」
「なに?どういうことだ?」
「人間のマスクをつけたような、コックローチ。マスクローチという名前はそこから来てるの」
「納得の名前だが…そいつをどう捕まえてどう発電させるんだよ?」
「このパイプのチューブをつかうわ」
ルミリはヨイショとパイプを持ち上げた。
「あとはコイルを一定の距離に巻いて…マスクローチに磁石を固定させて走らせるだけ」
「思っていたよりも残酷な発電方法だな」
「ええ、マスクローチはとある惑星で繁殖を心掛けたところ3日で惑星に適応した体に進化したのよ。延々と走り続けられる持続緑は生物として偉大だわ」
「そ、そうなんですね」
「今回は持続力を利用するの」
「いったい何をするんですか?」
「マスクローチをパイプ内で延々と走らせるの」
「えええ!!」
「ルミリさん、それって流石に可哀想じゃないですか?」
「マスクローチは体の呼吸器官すら自身で持たない生物、走ることによって彼らは酸素を体に巡らせてる、一度止まったら死んでしまう生物なのよ」
「生物としての在り方としても悲しい生き物なんだな」
「ええ、そこで彼らの持久力を電気に変えるの。この実験は過去に行ったことがあるわ。まずはマスクローチをおびき寄せないとだけど」
「どこに生息してるとか知ってるのか?」
「基本的に暗い洞窟とかに生息しているのが多いわ」
「ここは森だから洞窟もありそうだな」
「でも、もっと簡単におびき寄せられる方法があるわ」
そう言ってルミリは周りにいた食虫植物のツタを集めて準備を始めた。
◇
その晩、暗闇の中響達はミドルロケットの後ろでルミリの仕掛けた罠を見張っていた。
「ルミリさんあの罠ってなんなんですか?」
タモはルミリが用意したツタでできた塊を見る。
「あれはね、マスクローチの体を真似た物よ。見てて」
ルミリはそう言って怪しい光のライトをツタで出てきた罠に当てる。
ジッワ…
そこから青白く人の顔のような模様が浮き上がる。
「あ!なんか人の顔にみえるよ!」
「ルミリ、いったいどんな仕組みなんだ?」
「ブルーライトよ。特殊な光で食虫植物の体液を照らしたの。マスクローチは嗅覚、視覚がとてもいいの。ブルーライトで照らされる自身の仲間がいればきっと現れてくれるはずよ」
ルミリが解説している最中に草むらがゴソゴソと揺れ始める…
「のなかさん、網を準備して」
「お、おう!」
のなかはマスクローチの捕獲の準備をする。
ガサガサ!
「きた!」
ルミリの声を合図に全員が捕獲に飛び出す。
「え…」
「あ?…」
そこには人間の生首がものすごい勢いで草むらから出てくるのが見えた。
「うわー!!」
「ぎゃあぁ!!!」
響とのなかは叫びを上げる。
「ふ、二人ともあれがマスクローチよ!人の顔に見えるのは模様なの!」
「マジかよ」
「すっごいリアルだね」
「皆さん、マスクローチを追いかけますよ」
タモはマスクローチのあとを追いかける。
「ダメだ、足が早すぎる」
「この狭い場所でもあの速さを維持しながら走れるマスクローチ。感激だわ」
ルミリはマスクローチの生態に感動している。
「どうする?響?」
「のなか網貸して、私が捕まえるよ」
ーーーチリン
響はスキルを発動した。
「わー!響が踊り出すよ!」
モサ子がそれを見て喜び出す。
「私の前の草木、食虫植物…全部ノーツで弾き飛ばす」
ビュン!
響は譜面の円盤に乗り飛び出した。
タンッ!タタタタタタッ!タンッ!!
タンタンタタタタン!!
リズムカルに響の目の前を囲む木々は弾かれていく。
「マスクローチどこ…ひぇ!」
響は逃げるマスクローチを見つける。
人の生首に見えるその模様に驚きを隠せない。
「追いついたよ!マスクローチ!」
ギッギッチー!
マスクローチは響が追いかけてきていることに気づいていた。
「ごめん、あなたの力貸して欲しいの」
パッ!
響は網を使ってマスクローチを捕まえた。
◇
マスクローチは軽量磁石を背負いパイプの中に入っていく。
ギュルン!
円を書くように繋がっているパイプの中をものすごい速さで走り回る。
「す、すごい、マスクローチが走り出した!」
「もともと暗い場所を好んでいるの。マスクローチにとって止まることは死んでしまうのと同じなの。だからこうやって走らせることができるこの環境は彼らにとってもいいはずよ」
「そ、そうなんですね」
「では、マスクローチの入ったパイプをミドルロケットに背負わせますね」
タモはゆっくりと発電パイプをミドルロケットに設置し、のなかは電流ケーブルを本体につなげた。
ガチャン!
ミドルロケットに電流が流れ始めた。
「おい、モニターにマップが映ったぞ?」
「わー!ルミリすごい!」
「マスクローチは長寿の生物、少なくとも生存者が見つかるまではエネルギーを起こしてくれるわ」
ルミリは安堵しながらそう話すのであった。
「どれどれ…あ、過去にパラダイス1が打ち上げた衛星から地上のマップが送られてきてるみたいです」
「衛生が飛んでいるってこと?」
「多分無人ですけど…これのおかげでパラダイス1、2の着陸地点に建築された街の情報位置が分ります」
「生物の研究を行っていたのはパラダイス2近く。そこに行けば何か手がかりがあるかもしれない」
「のなか、せっかくだし手伝ってあげようよ」
「ああ、言われなくても」
響達一行はタモとルミリと共に生物研究が行われたパラダイス2の着陸地点へ向かうのであった。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
マスクローチとても恐ろしい生き物です。現実には存在してほしくないですね。もしいたら「人面ムシ」というような妖怪になりそうです。
物語はまだまだ始まったばかりです。パラダイス2までの冒険をお楽しみください。




