アティ、イザークと買い物に行くことになる
アティとハロルドは隊舎にある彼の執務室に向かって歩いていた。
「これからノーブル大通りで買い物をしよう。どんな感じの部屋にするか決めたかい?」
「はい、温かい雰囲気の部屋にしたいんです。でも、どんな感じのものが必要なのか分からなくて……」
アティは眉を下げ、心情を吐露する。自分の部屋に対する夢はあるが、模様替えをしたことがなかったため、イメージができなかったのだ。
「売っている家具を見たら、気に入るものがきっと見つかるよ。焦らず、じっくり探そうね」
「……はい、ありがとうございます!」
ハロルドの励ましに、アティは大きくうなずく。そして、彼女はネガティブに考えることをやめようと決めた。
2人が廊下を曲がると、執務室が見えた。その扉の前にはイザークが立っている。
彼はすぐに2人に気づくと、主人を見つけた子犬のように2人の元へ走ってきた。
だが、その尻尾は下がっている。
「すんません、副団長。休日のとこ悪いんすけど、急ぎの書類仕事が第1騎士団から届いたっす。アティさんもすんません、今日は副団長と買い物に行く予定っしたよね……」
今にも悲しい鳴き声を出しそうなイザークに、アティは急いで首を横に振った。
「いいえ、気にしないでください、イザークさん。買い物はいつでもできますし、お仕事の方が大事ですから」
ハロルドはイザークから書類を受けとり、ザッと目を通した。そして、眉間にシワを寄せる。
「第1のやつら、面倒くさい仕事を押し付けてきたな……イザーク、君の今日の予定は?」
「おれっすか? ……おれはこれから訓練して、夕方から見回りっす」
イザークは今日の予定を思い出すために、上に目線をやった。
ハロルドはこれは幸いと、自身の部下を使うことにする。
「じゃあ、見回りの時間を早めよう。アティさんと買い物に行ってきてくれ」
「うぇぇ! おれでいいんすか!? 女の子の買い物なんて、1回もしたことないんすよ!?」
驚きに耳と尻尾を逆立てるイザークを可愛らしく思ったアティは、微笑んでお願いする。
「イザークさんがついてきてくれたら嬉しいです。お願いします、イザークさん」
そんなアティに、イザークは耳と尻尾をピンと立てた。彼の頬は少し赤く染まっていて、恥ずかしそうだった。
「……そう言われると断られないっすね。でも、おれ、どこで何を買うか全く分からないっすよ?」
「それは私がリストを書くよ。ノーブル大通りは専門店が多いからね」
そして、アティとイザークは2人で買い物に行くことになった。




