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捨てられ令嬢は、騎士団に拾われる  作者: わんたんめん
拾われ令嬢、家をもらう
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アティ、イザークと買い物する

 アティとイザークの2人は、ハロルドが書いたリストにあったペンキ屋に来ていた。


「アティさん、壁はどんな色にするっすか?」

「うーん、部屋を明るくする色がいいですよね……あ、この色はどうですか?」


 アティは近くにある薄いラベンダー色のペンキを手に取った。


「それも可愛いっすね! こっちのカスタードクリームみたいなイエローと、新雪みたいなホワイトも可愛くないっすか? いっぱいあって悩むっすねー」

「あ、そっちも可愛いですね。うーん、本当に悩みます……」


 そして、アティは10分ほど悩んだあと、部屋の壁に塗るペンキを綺麗な白にすることに決めた。


 ペンキを隊舎に送ることを頼んだあと、アティたちは家具屋に向かった。


「家具って高いんですね……これが普通なんでしょうか?」

「だいぶ高いっすけど、この辺りの店なら、これぐらいが適正価格だと思うっす」


 その言葉に、アティは顔をしかめる。手持ちの金では到底、手が届きそうになかったからだ。


「アティさん、そんな顔しなくても大丈夫っすよ。お金のことなら心配ご無用っすから!」

「どうしてですか?」


 自信満々なイザークにアティは首をかしげた。


「騎士団に入ったら、支度金がもらえるんす。

 おれたちも気に入った武器とか身の回りのものを買ってるんで、アティさんも安心して身の回りのものを選んでほしいっす」


 イザークの言葉は力強かった。しかし、アティが素敵だと思った家具一式の組み合わせは、とても高価だ。 


「でも……」

「アティさんがずっと見てる、このセットなら、ウィル先輩の愛剣に比べたら安いっすよ」

「え!?」


 アティはいつもウィルの腰元にあった剣を思い出しながら、いいなと思っていた家具一式を見回した。

 ベッドやチェスト、化粧台などがセットになっているそれは、デザインや材質が良い分、当然に値段が高いのだが、あの剣はそれよりも高いらしい。


「それにディーン先輩の魔術は宝石使うんで、かなりお金がかかってるっす。それに比べたら、アティさんの初期投資は騎士団にとって微々たるものっすよ」

「え、ええ……」


 アティは顎に手を当て、深く悩んだ。とても気に入ったし、イザークの後押しもあった。だが、やはり高い気がする、とアティは思うのだ。


「しかもバート先輩はときどき工房を爆発させてるから、修理費が結構かかってるっす。

 アティさんが工房と家具を大事に使うなら、本当に大丈夫っすよ。何か他に気になるもの、あるっすか?」


 アティは思わず首を横に振る。店に入ったときから、この一式しか目に入らなかったのだ。


「じゃあ、これに決まりっすね! 店員さん、呼んでくるっす」

「え?」

「え? ダメっすか?」

「ダメじゃないですけど……」


 キョトンとした顔のイザークに、アティは何と言おうか考えて顎に指を当てる。

 そんな彼女に向かって、腰に手を当てたイザークはイタズラっ子のように微笑んだ。


「じゃあ、先輩の言うことなら聞けるっすか?」

「先輩ですか?」


 今度はアティがキョトンとする番だった。


「そうっすよ。おれはアティさんの先輩なんす。だから、今回は言うこと聞いてほしいっす」


 イザークの完熟林檎の瞳は優しく細められていた。それに見つめられたアティはポツリと言葉をもらす。


「……イザーク先輩」

「はい、イザーク先輩っすよ。おれはアティさんの先輩なんで、迷ったり困ったりしたときは頼ってほしいっす」


 彼の幼い顔つきに、後輩を見つめる優しさと温もりが宿る。アティは素直になることにした。


「私、これがほしいです。これに決めたんです」

「じゃあ、これで決まりっすね。よかったっす!」


 そしてイザークが店に配送を頼み、明日届くように手配したあと、2人は店を出た。

 アティは、買い物リストを持っているイザークを見る。


「イザーク先輩、次のお店はどこですか?」

「……うーん、それよりお腹すかないっすか?」


 アティは自分のお腹を見下ろした。確かに少しお腹がすいているわ、とアティは頷いた。


「じゃあ、おやつ食べに行くっすよ。安くて美味しいお店があるんす!」


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