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家に帰りついた勇者はメイドを呼び集めて虹香を紹介する。
「ーーと、言うわけで今日から働くことになった虹香ちゃん」
「ちょっと待ってよ! 私は働くなんて言ってないわよ!」
そう言う虹香は真っ黒いメイド服を着ていた。エプロンとカチューシャだけが白く、他のメイドに混じると目立つ。
「ノリノリで着たからその気なのかと……」
計画どーり! という顔をしている勇者に、はめられた! という顔をする虹香。
「これは逸材よ」
「そうね。鍛えれば良いメイドになるわ」
そう言って虹香の肩を掴むのは勇者のメイド隊の筆頭のギャリーとこよなくメイド服を愛するパミュリュム。
この二人はこの国の貴族に派遣されるメイドの元締めだったが、勇者のアキバ風に洗練されたメイド服に魅せられて勇者の元に来たメイドスキーだった。そして元締めらしく人材を見る目はピカイチだ。
「……あの、放してくれませんか?」
「大丈夫よ。痛くしないから」
「ちょっと目をつぶってくれればいいのよ」
そう言いながら虹香を引きずって行ってしまった。その光景を勇者は合掌して見送った。
「よし、これで彼女の事は解決した」
「どこが!?」
なんとなく一から見ていた四郎がツッコミを入れる。
「いつから見ていた?」
「メイド達を集めて、仰向けになったお前が、『踏んでください』と言った所からだな」
「やってねえよ! やろうかとは思ったけど……」
「思ったのかよ!」
足フェチの勇者に自重という言葉はない。前にやろうとしてサータニアにローリングソバットを食らった為に警戒しているのだ。
『その程度で折れてはフェチ道の探求者たる勇者の名が廃るぞ!』
「それもそうだな。よし、お前らふーーグエッ!」
「勇者様、おふざけが過ぎますよ!」
仰向けになった勇者の頭部をサッカーボールのように蹴っ飛ばしたサータニアは、勇者の屍を肩に担ぎ上げ運び去った。
「……おいら達も依頼を受けに行こう」
勇者に合掌して、家を出た。
ギルドは朝の騒々しい姿とはうって変わり、数人受付と暇している冒険者がいるだけだった。
「それでは依頼の薬草採りを……」
「それ以外でお願いします」
「それでは、新・薬草採りを……」
「同じだろうが!」
「しょうがないですね。ならこの依頼、薬草採りZを」
「何でZ付いてんの? 気になるわ!」
「知りたければ、依頼を受けてみるしかないです」
「くっ、これを受ければ意味はわかるが……後悔しそうな気がする」
受付と四郎のやり取りを見ているカーリン達はそれを見もしない。何故ならこのやり取りは薬草採りを受けた後からどうにか四郎に受けさせようとギルドがやっている茶番だからだ。四郎は悩みに悩んだ末に、
「他の依頼を受ける」
今日は引っ掛からなかった。四郎の顔に勝利の笑みが浮かぶ。
「他の依頼はありません」
しかし、受付も今日は引かなかった。この為だけに今日は朝から冒険者を捕まえて自分の処理する依頼を無理矢理に受けさせたのだ。
「まさか……」
「フフフ……どうしますか? この依頼、ドキッ! 筋肉だらけの薬草採り~毒草もあるよ~を受けますか?」
「長いし、依頼名がおかしいだろ!」
ちなみに他の受付に替われば残っている依頼もあるのだが四郎はそこまで頭が回っていない。カウンター越しに睨み合う二人をよそに隣の受付嬢からアルッテが依頼を受けている。カーリンもそろそろ四郎を呼ぼうかとした時に、
「わたしが依頼を出そう! 受けてくれるか?」
そう声をかける男が現れた。片手に黒い表紙の本をもっつ金髪碧眼の男だ。そのまま四郎に近寄ろうとし、
「今日は引き分けだな」
「そうですね私が引いてあげたお陰ですね」
「引いてないよな! 依頼を全部処理してまでおいらをはめようとするんだから!」
『ほら、四郎行くぞ。受付譲さん相手してくれてありがとう。お疲れさまでした』
「はい、カーリンさん依頼頑張ってください」
男を無視して四郎を引っ張っていくカーリンが出ていくのを見送った。
「あの、依頼を……」
「はい、依頼ですね。依頼の受付はあちらの方になります」
四郎に無視された男は四郎を追おうとして、受付嬢に捕まえられ奥の部屋に連れていかれた。そして、ギルド内で勝手に依頼をしようとしたことの説教を受けるのだった。
出落ちの男は……たぶん絡むはず。




