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あの神官行方不明事件から10日後。
「らーめん、一丁!」
「ラーメン、一丁!」
街の一角にラーメン屋が出来た。その中では“過食と脂肪の”神と女が忙しそうに働いていた。
「おー、流行ってんな」
『でしょ?』
「さすがはディーニュちゃんだ。頭を撫でてあげよう」
『わーい』
四郎はつき出されたディーニュの頭を撫でながらラーメン屋を見ていた。
この国の神(筋肉フェチ)に捕まえられて罰として店を出して人々に喜ばれることを約束させられた。その時に監督としてディーニュに指導されてこのラーメン屋が出来た。
「こっちに背油一丁!」
「はーい」
勇者も常連になっているようだ。
『スープが足りねえな。ちょっと行ってくる』
「はい、わかりました」
“過食と脂肪の”神が裏にスープ作りに行ってしまった。
「……いや、まさかな」
“過食と脂肪の”神の後ろ姿を見て四郎は呟いた。
「このギトギトの油がうまいんだよな!」
「麺と絡んだスープがいいよな」
「俺なんかスープだけおかわりしたぜ!」
四郎は想像した。あの時、“過食と脂肪の”神は腕から油を出して料理にかけた。このスープの油も……。
カポーーーン。
銭湯で響く音が脳裏に聞こえ、四郎は背中に寒気を感じた。
「おいら、ここでは食わない」
『えー? “過食と脂肪の”神が頑張って出してるのに……』
「ぜっっったいに食わない!」
四郎はその場から急いで帰った。
「今日の料理はトンカツ、唐揚げ、天ぷら等の濃いものです」
勇者の家の夕食はニキビなど多く出そうな油っこいものが出た。
『うまそうだな』
『お姉さま、はい、あーん』
カーリン達が美味しそうに食べている。それを見てメイドはにっこりと笑った。
「よい油が手に入りましたので頑張りました」
「……油?」
「なんでも勇者様が貰って来たそうです」
「…………」
『どうした? 食べないのか?』
顔を青ざめさせた四郎を見てカーリンが聞いてきた。
「勇者はどこから貰ってきたんだ?」
「最近話題のラーメン屋からですけど?」
「うわああぁぁぁっ!」
四郎は逃げた。そして気がつくとラーメン屋の裏手に来ていた。中からはグツグツと何かを煮込むような音がしている。そっと扉を開けて覗き見ると、
『ふぃーー。ごくらく、極楽』
“過食と脂肪の”神が寸胴の中では温まっていた。四郎の目から光が消え、扉はそっと閉じられた。
「おいらはなにも見なかった。おいらはなにも見なかった。おいらはーー」
この日、帰ってきた四郎は布団に潜り込みそう呟き続けた。
『なにか、足りない』
“過食と脂肪の”神が寸胴の中で呟いた。ツッコミが足りない。……そんな日だった。




