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椅子に縛り付けられた神官と漂う肉の焼ける臭いに唖然とするなか、ディーニュは臭いを嗅いだ。
『ふむふむ。よい素材を使ってるね』
「よくわかったね。お嬢ちゃん」
その声に答えたのは手に料理の入った皿を持った女が立っていた。赤い唇が大きいが美しい顔立ちの女だ。
「貴様が犯人か!」
腰の剣に手をかけて威嚇する勇者の前で口元に笑みを浮かべ、
「何を言ってるのですか? 私は料理を出しているだけですよ」
「嘘をつくな! そこにいる神官達はお前に拐われたんだろ!」
「それは違いますよ。勇者様」
女の後ろから現れたのはたっぷりと脂肪の乗った三段腹をもつ老人だった。
「誰?」
「忘れましたか? コブトリーノですよ」
勇者は四郎と顔を見合わせた。
「コブトリーノ?」
「コブトルィーノ?」
「コブ、トリーノ!?」
「おお、コブトリーノ!」
二人はガッチリと握手をした。
「わかりましたか?」
「「いや、ぜんぜん?」」
「何でだ! 神官の事で相談に来ただろうが!」
「あの人、痩せてたよな?」
「こんなに太ってなかったな」
そう言うと、コブトリーノは太った体を自慢するようにして言った。
「私は目覚めたのです。筋ばった筋肉ではなく柔らかな脂肪の良さに!」
「はぁ?」
「肉の間を幾重にも走る白い軌跡。それがフライパンで焼かれ、滴る油がはじける音。それを口に含みとろけるような柔らかさに舌包を打つ快感」
うっとりとするコブトリーノに嫌な者を見る目を向ける四郎達。
「そして、この事を誰かに伝えたいと思い、神官を拐ってきたのです!」
「お前かよ!」
その間に神官に料理を持っていき、脇目も振らずに食いつく姿を見ている女が、
「ああ~、いいわ。ガツガツ食べて太っていく男を見るの……」
「おい、勇者よ」
「ああ、いわゆるデブ専てやつか?」
顔を赤くしてキラキラした目で見ている女を分析する。その横でディーニュが、
『ふむふむ。これなら……』
神官達が食べている物を見て、手の中の調味料をふりかける。するとそれを食べている神官が体から汗を垂れ流してふくよかだった体が細く変わっていく。
「おお、体が軽い!」
「たるんでいた腹が消えた!」
「この筋肉に染み透るこのエネルギー! これならまだ先に行ける!」
筋肉は落ちているが神官の目には神殿の中で見た活力が戻っている。
「何をしたのよ! 貴女は!」
『より美味しく、より体の代謝に良いものにしただけだよ』
「何て事を! この“過食と脂肪の”神を崇める私の料理を!」
『なら、勝負してみる?』
「当たり前よ!」
女はディーニュの挑発にのって勝負することになった。
『勝負の方法はこの神官3人に食わせてうまい方を選んでもらう事でいい?』
「いいわよ!」
「なあ、料理マンガみたいな展開なってねえ?」
「僕は見たくないな神官の服が弾け飛ぶのとか」
そんな事を話ながら止めない四郎達であった。




