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「ここか……」
勇者が見上げた先には古びた屋敷があった。誰も住んでいないのだろう。門の横には草木も生え放題になった庭が見えている。
『料理の臭いはここからするよ』
ディーニュは鼻をヒクヒクさせて言った。
「見ろ! 僕のダウンジングの示した位置と一緒だ!」
「それが胡散臭いんだよ!」
勇者が水晶のペンダントを地図上で持ち、その揺れ具合で占う。昔、テレビで見たからバッチリだ! そう言って示した場所がここだった。
「偶然だからな」
「天才は凡人には理解できないのだ」
「ハイハイ」
「かまえよ!」
「お前をかまってくれるのは後ろにいる」
勇者が振り返るとサータニア他の仲間が般若化して立っていた。
「どうしたのかな? そんな怖い顔して」
「言いたいことはそれだけですか?」
「依頼の事かな? こっちも友人が大変だったんで……」
「言い訳は聞きません」
「問答無用」
「諦めるニャ」
ーーゲシゲシゲシ……
『あれはいいのか?』
「放っておこう」
3人の美脚に足蹴にされる勇者の顔がニヤけているのを見た四郎は屋敷に向かった。
「扉には鍵がかかってるな」
『よし、ぶち破って……』
「やるなよ! アルッテ」
『やるな、やるな、は殺れと言うこと』
「どこの芸人だよ! それと字が物騒だよ!」
アルッテはカーリンに任せて四郎は扉を調べる。取っ手の下に鍵穴がある。
「ここの鍵は無かったよな?」
「無いなら僕に任せてもらおうか」
「勇者、堪能したか?」
「ふっ、言わせんな」
爽やかな笑みを浮かべるその頬には足形がしっかりと付いていた。そして懐から針金を2本取り出して鍵穴に突っ込む。
「鍵開けできるの?」
「特番で見た。だからできるはず……ガチャガチャ」
「できるか! それと口で言ってないで手を動かせ!」
勇者が鍵開けに挑戦して10分過ぎた。鍵穴にはぐにゃぐにゃに曲がった針金が引っかけられたまま、
「取れなくなっちゃた。テヘッ!」
「可愛くねえし……どうすんだよこれ?」
四郎は針金を掴み、上下に引っぱた。
ーーカチッ!
扉が開いた。
「…………」
「……僕のおかげだな!」
「うっせえ!」
得意顔の四郎に勇者がすねる。しかし深呼吸1つで気を取り直した勇者が扉を開けて中に入り、
「ここからは何があるかわからない。気をつけるぞ!」
キリッとした顔で一同に告げる。一緒に来た兵士達とサータニア達はそれにうなずく。
「足形がなければ決まったのにな」
『シッ! 言わないの』
勇者を先頭に中に入る。中は広く右側に階段があった。階段には埃がたまっていて上の階へは誰も行っていないのは明らかだ。
「奥に行ってみよう」
左端には奥に続く廊下見える。勇者は廊下を進んでいく。
「止めてくれ! もうそれ以上は止めてくれ!」
廊下の奥の一室からその叫び声が聞こえた。勇者は足早にその部屋の前まで行き、ドアに耳をつける。
「もう、止めてくれ! 頼む!」
「この分じゃ、死んじまう」
「こんなこと許されると言うのか!?」
「どうやらドアの奥には行方不明になった神官がいるようだ」
勇者はこっちにうなずくとドアを蹴破った。
そこに漂う肉の焼ける臭いや血の臭い。そして食材を切る単調な包丁の音。
「そんないい臭いさせているのに、食わせてくれない何て……殺す気か!」
「この分じゃ腹の音で気が狂いそうだ」
「お預けは止めてくれ! 頼む!」
椅子に縛り付けられたふくよかな神官達が涙とヨダレをたらして懇願していた。




