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「どうなっているのだ!? 神官達がまた消えたぞ!」
神官捜索の依頼を受けていた勇者がわめいている。あれから神官達の失踪が相次いであり、その行方を追っている勇者や依頼を受けた冒険者達は街をしらみ潰しに探している。
『どうしてまた神官が消えるんだ?』
「街に買い物と称して筋肉見せに行ってるかららしい」
『そいつら閉じ込めとけ!』
「そういしたいんだが、これも布教であるとか言って聞かないんだそうだ」
『……そうか、ガンバってくれ』
「勇者の名に恥じぬ働きをしてくれ」
わめく勇者を置いて外に出る。街は神官失踪事件があっているのにいつもより活気がある。それもそのはず、いつも布教と称して見せ筋してくる神官がいないのでのびのびしているのだ。そんな中でカーリンが少し顔を赤らめながら四郎に声をかける。
『し、四郎、行きたい所があるんだが……』
「カーリンが誘うとは珍しいな」
『お姉さまに誘われるなんて、死ねばいいのに!』
「……なら断ろうかな?」
『キサマ! お姉さまのお誘いを断るだなんて……死にます? 死にたいんですね!?』
「あー! もう、こいつめんどい!」
無駄に絡み癖がついているアルッテに絡まれながらカーリンに着いていく。そこは小さいが小綺麗なパン屋だった。入口からは焼きたてのパンの臭いが漂ってくる。
「いい臭いだな」
『そうだろ? この間、通った時から気になってたんだ』
中に入ると見事な逆三角形の体をしたオヤジがパンを並べている。
「まさか! こんな所にも神官が!?」
その声に気がついたのかこっちを見て鼻で笑う。
「神官と一緒にするな。俺のは毎日、パン生地捏ねるために作った筋肉だ」
そう言って両腕に力瘤を作る。そのポーズ事態が神官みたいだと思ったが口には出さなかった。
「今日は何だ? パンか?」
「他に何かあるのか?」
「最近、作り始めたクリーム入りのパンだ。食ってみるか?」
そう言って掌サイズの茶色い物を出してくる。四郎がかじりつくと中から甘いクリームが溢れて来る。
「これはシュークリームか?」
「何だ、似たものがあるのか?」
「故郷にあった御菓子? だったか? 女の子に人気だったな」
『うむ、うまい!』
『お姉さまの口元に白いものが……ハアハア……』
シュークリームにかじりついて顔を緩めているカーリン。その口元を見て興奮しているアルッテ。いつも通りかと四郎は無視する。
「これを10個ばかりもらえるか?」
「まいどあり!」
シュークリームの入った袋を持って他に何か無いか探しながら街を散策する。うろうろしながら少し狭い路地に入った時に背後から突き飛ばされて四郎は袋を落としてしまった。
『四郎、大丈夫か?』
「それよりもシュークリームは?」
『それならほら、突き飛ばしたやつが持ってくれている』
「あれはもって逃げたって言ううんだよ!」
四郎を助け起こすのを見ていたアルッテはそう言って遠ざかっていくその頭から布を被ったその背中を指差している。
「アルッテには無しだな」
『捕まえたらその分、アタシにくれ』
「わかった」
そう言うが早いかその背を追いかける。カーリンの追跡で路地裏の袋小路に追い詰めた。
『さあ、返してもらおうか?』
追い詰められたそいつは袋の中に手を突っ込みシュークリームを口に詰め込み始めた。
『あぁぁぁぁ! アタシのが……』
無理矢理詰め込み全部飲み込んでゲップするそいつに鉈を突きつける。
『腹、かっさばいて取り出してやる』
怨念に満ちたその声にそいつは怯えて腰を抜かした。
「まてまて、後でまた買ってやるから殺すなよ」
そう言って追い付いてきた四郎がカーリンを止める。兵士につき出すためにそいつを起こした時に布が外れて顔が見えた。ふくよかな顔をした男だった。その顔を見て四郎は首を傾げる。
「どっかで見たような……」
男は慌てて顔を隠す。四郎は思い出せないまま、男を兵士につきだしてシュークリームを買った店に向かう。
「災難だったな2、3個サービスしてやる」
オヤジが話を聞いて多目に入れてくれた袋をカーリンに渡す。その横で今も考え続けている四郎。
「兄ちゃんも元気出せ! ほら、この筋肉みて」
「何、神官みたいな事言ってんだよ! ……神官?」
そこで思い出した四郎は叫んだ。
「あいつは行方不明になった神官じゃねーか!」




