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月に一度、この国には神官が街に下りてきて布教をする日がある。そうこの日も街の一角で台の上でポーズを決める神官が見られる。俗に言う筋肉布教である。
「さあ、よく見るがいい! この胸の筋肉を!」
ーーピクピクッ! ピクピクッ!
「こっちは左右別々に動くぞ!」
ーーピクンッ! ピクンッ! ピクンッ!
「ラーーララ、ラララ、ラーラー」
旋律を口ずさみながらポーズを変えていく神官。人々はそんな神官達をいつものように遠巻きにして眺めている。
だが、今日は違った。
「「とーーう!」」
その声と同時に飛び上がる二つの影。そして空中で体をひねりながら飛び蹴りの体勢になり、神官の方に飛んでいく。
「「ダブル・〇イダーキック!」」
神官達の場所に激突し覆い尽くすほどの土煙を上げる中から人影が飛び出す。
「やったか!?」
「……いや」
土煙が治まるとそこには筋肉を膨らませて防御体勢をとる神官達がいた。
「チィィッ! 何て奴らだ」
『『お前らがな!』』
四郎と勇者の後頭部にハリセンがぶちかまされた。
『それで? 何してたの?』
ハリセンを片手に正座させられた四郎と勇者を見下ろしている。その背後ではポーズをとる神官がいた。
「この間、コブトリーノの事で神殿に相談に行ったんだが……」
『薬草採りの件か……』
「それなら筋肉の素晴らしさを人々に伝えるために手伝ってほしいと言われて……」
『それで、この茶番か……』
呆れたように四郎達を見た。
「茶番だと? この筋肉がただの見せ筋ではないと証明して筋肉の素晴らしさを伝えようというのに……」
「ふん、しょせんこんな筋肉のキの字も無い奴にはわからないんだ」
「それを分からせるのが我らの役目。娘よ、攻撃して来るがいい。どんな攻撃でもこの筋肉には傷ひとつつけられないぞ!」
『……ほお?』
カーリンが殺気を放つ。それだけで神官は自分が解体される幻想を見た。皮も筋肉も骨もバラバラにされーー並べられる。
「おい、大丈夫か!?」
気を失った神官を仲間が助け起こす。目覚めない彼を抱えると、
「こいつが負けたのは筋肉が未熟だったからだ。俺達の筋肉は負けてない」
「勝負を着けたいが……筋肉が栄養を求めている。仕方がない。今日はこのくらいで勘弁してやる!」
そう言って逃げていった。
「ねえちゃん、ありがとよ。あいつら追っ払ってくれて」
「時々来るんだが、往来で邪魔でね。はい、これ持ってって食べな」
「ねえちゃんが止めてくれて助かった。これも持ってけ」
『あ、ありがとう』
『お姉さまへの貢ぎ物はこちらへ! この二人に渡してください』
人々から神官を退けたカーリンにみんながお礼とちょっとした物を渡していく。アルッテはその人達を整理して貰った物を四郎と勇者に持たせていく。
「……神官に人気が集まらないでカーリンに集まっちゃた?」
「今度、神官には違うアプローチを考えてもらおう」
そう考えた四郎達が次の日に神殿へ行くとこの時の神官が行方不明になったと聞かされる。




