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「私は勇者様に神殿の事で相談しに来たのです」
ステーキ地獄から解放されて落ち着いたコブトリーノは『筋肉被害者の会』について話始めた。
「そう、あれは雨の日の事じゃった」
「お客さん1名お帰りです!」
「ちょっ、冗談じゃ! 年よりのちょっとした茶目っ気じゃ。ちゃんと話すから!」
どこからともなく現れたメイドに腕を捕まれてつまみ出されそうなコブトリーノは懇願した。
『勇者、これを貸そう』
「ハリセン?」
カーリンが手渡したのはアルッテ躾用のハリセンだった。
『四郎からツッコミには必要な物だと聞いた』
「四郎が……」
その四郎は手羽先を四方に置かれて封印されている。勇者は無視した。
「薬草採りは前からあったのですが、昔は時々神官とすれ違い、子供がそれを見てはしゃぐ程度だったのです。それがあの白い台座ができて毎日のように筋肉を見せびらかすようになってから……ある者は神官になると家を出て、ある者は筋肉を描く画家となり、またあるーー」
『話が長い』
「……父親が神官になって家族がバラバラになった者、そして私の様に一切肉を受け付けなくなった被害者がいるんです!」
『無視された……』
勇者は無言で落ち込むアルッテの頭にハリセンをおとす。おとされたアルッテがニヤッとしたのは気がつかなかった。
「お願いです。あの筋肉を削ぎ落として胸の筋肉を無駄にピクピク動かせないようにしてください!」
「いや、無理だし。嫌なら受けなきゃいいだろ?」
「子供が家計の足しにできる安心できる依頼なんです。せめて筋肉を見せつけるのだけでも……」
「……わかった。神殿にそれは言っておこう」
「……お願いします」
表情が晴れないまま、コブトリーノは帰っていった。
「問題は四郎か……」
『正気に戻す事はできないのか?』
「それは簡単だろ?」
そう言うと赤いハイヒールを履いたミニスカメイドを連れてきた。そして四郎を指さし、
「さあ、踏むのだ!」
『それで目を覚ますのはお前だけだ!』
カーリンのハリセンが勇者の顔面を強打した。吹き飛んだ勇者はメイドに足蹴にされている。
『まったく……』
カーリンは四郎を抱き頭を撫でる。四郎の顔は調度カーリンのおっぱいに当たっていた。
『にやけているのが腹立たしいですね』
四郎の顔を見てアルッテが言う。ディーニュも覗き込み口をへの字に曲げる。そしてポケットから紫色した肉を取り出した。
『カーリン、そのまま押さえといて』
『えっ? 何するの? まさか……』
『ショック療法よ。これを食べさせれば大丈夫!』
四郎が肉に気づきカーリンの腕の中で暴れ始める。
『よし、ウチも手伝う』
そう言ってアルッテが四郎の口を開く。その時、アルッテのおっぱいも四郎の頭に当たっていた。
『こら、四郎暴れるな!』
カーリンも覚悟を決めたのか四郎の頭部を胸元に抱えて動けないようにする。カーリンとアルッテのおっぱいを押し付けられ四郎の目に光が戻りかけている。
『えい!』
そこに紫色の肉を四郎の口に放り込む。カーリンとアルッテはそれを見て四郎の口を閉じさせる。しばらく口をもぐもぐさせていたが喉元が飲み込むように動いた。その後、奇声を発して白目を向く四郎の姿があった。
「あれ? おいらどうしたの?」
ベッドに寝かされた四郎が目を覚ます。その前にはステーキが置いてあった。そのステーキを見て空腹を覚えたのか、
「いただきます」
そう言って食べ始めた。
正気に戻ったのはディーニュの肉のためかおっぱいのためか、わからないままその後戻ってきたみんなに喜ばれてこの件は終ったはずだった。
「やはり、あの神官達を排除するのは駄目なのか……」
コブトリーノはそう呟いて勇者の家から帰っていた。コブトリーノも昔は神官を目指して筋肉をつけていたが恋人にキモいと言われ別れてしまった。その後、その事がトラウマになり、神官への道も半ばで途絶えて今では筋肉を呪う一人の男しか残っていなかった。
「どうにかしてあの筋肉を倒す方法はないのか……」
『求めるなら与えよう!』
「!! 誰だ!」
『あの硬く無駄に脂身のない肉を消す方法を』
そこには白い布を頭からかぶり赤い口元しか見えない細身の女性が立っていた。コブトリーノの目はその赤い口元に吸い寄せられたように離れない。
この日、コブトリーノの姿が消えた。




